『愛がなんだ』は『カメラを止めるな!』に続く“事件”となるか 大ヒットの要因は発信力と共感力

『愛がなんだ』は『カメラを止めるな!』に続く“事件”となるか 大ヒットの要因は発信力と共感力

 また、ライターの麦倉正樹氏は、単館系劇場に足を運ぶ度に“観客の熱量”を感じると語る。

「拡大上映によって単館系作品をシネコンでも観ることができることは非常に喜ばしいと思います。そして、“聖地巡礼”ではないですが、シネコンで観て作品を気に入った方が、メイン館で再び同じ作品を観るという流れが、いまはできているのではないでしょうか。ただ作品を観るのではなく、特定の劇場で観るという“体験”を観客も大事にしている。昨年の『カメラを止めるな!』もそうでしたが、舞台挨拶やトークショーが毎日のように行われ、常に“生”の臨場感がある。80年代~90年代にミニシアターブームがありましたが、あのときよりも観客と劇場・作り手たちがさらに一体となり熱量を生みだしている気がします」

 『愛がなんだ』のほかにも、『主戦場』『ザ・バニシング-消失-』など、多岐にわたるジャンルで単館系作品が盛り上がりを見せている。ヒットする作品に共通する要素を麦倉氏は次のように分析する。

「『楽しかった』『感動した』というだけにとどまらない、『誰かと語りたくなる』というのが、現在のヒット作の共通要素だと思います。『愛がなんだ』も“全員片思い”というラブストーリーの定番でありながら、美しい形で終わらせるのではなく、ある種の“痛み”を残したリアリティに多くの人が共感し、誰かと語らずにはいられなかった。また、昨年の『カメラを止めるな!』がそうであったように、“ネタバレ”というものも大きなトレンドになっていますが、自分の目で観る、そして他者と共有する、その“体験”が非常に重要視されているように感じます」

 動画配信サービスが日々充実していく現在、“映画館離れ”を危ぶむ声は多い。しかし、映画館でしか味わうことができない映画体験は間違いなくある。昨年公開の『カメラを止めるな!』の大ヒットをきっかけに、映画興行の展開にも大きな変化が訪れそうだ。

(文=石井達也)

■公開情報
『愛がなんだ』
テアトル新宿ほかにて公開中
原作:角田光代『愛がなんだ』(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ
配給:エレファントハウス
(c)2019 映画「愛がなんだ」製作委員会
公式サイト:http://aigananda.com/

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