今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、2019年の春ドラマ注目作ベスト5
3.わたし、定時に帰ります。(TBS系)
3位の『わたし、定時で帰ります。』は今期のダークホース。WEB制作会社を舞台にした会社モノで、労働観の違う世代が入り混じる職場で上のバブル世代と下の若者世代の狭間で思い悩む30代の心情が描かれている。主人公を演じる吉高由里子の一見、ちゃらんぽらんに見える雰囲気が良い方向に作用しており、ハードのストーリーの緩衝材となっている。『ゆとりですがなにか』、『獣になれない私たち』(ともに日本テレビ系)、『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)など会社モノの傑作が近年増えているが、本作もその一つとなるのではないかと思う。
4.やすらぎの刻~道(テレビ朝日系)
4位の『やすらぎの刻~道』は、2年前に話題となった倉本聰による老人ホームを舞台にしたシルバードラマ『やすらぎの郷』の続編。見どころは主人公の老脚本家が執筆するドラマ『道』を劇中で展開する脳内ドラマ。『北の国から』の純くん(吉岡秀隆)を彷彿とさせる風間俊介の朴訥としたナレーションと、前作で主人公に心酔する女性・アザミを演じた清野菜名が演じるヒロイン・しののアクションが見どころ。まだ導入部だが、一年間の長丁場なので、壮大な作品になるのではないかと期待している。
5.夫のちんぽが入らない(Netfrix/FOD)
5位はNetflixとFODで全話配信しているドラマ『夫のちんぽが入らない』。話題となった原作小説の映像化という意味では『火花』に続く路線。『ゾンみつ』で主演を務めた石橋菜津美がヒロインを演じている。タイトルの通り、夫との性生活が重要なモチーフとなっているので性描写は外せないが、石橋はちゃんと脱いで濡れ場を披露している。
最終的に子供を産まない(産めない)カップルがどのように年を重ねていくのかという方向に向かうのだが、このあたり、『きのう何食べた?』にも通じるものがある。
どの作品も、戦後核家族のロールモデル(男がサラリーマンとして働き、女が専業主婦で、子供が1~2人いる)が崩壊した後で、家族、会社、老後、ジェンダー観といった価値観をどう再編成していくのか、というテーマを物語の中で追求しており、エンタメ性の中に、社会的なテーマに対する志の高さを感じる。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
よるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』
2019年4月20日(土)スタート
総合 夜11時30分から11時59分 (29分・連続8回予定)
原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」
脚本:三浦直之
出演:金子大地、藤野涼子、小越勇輝、安藤玉恵、谷原章介 ほか
演出:盆子原誠、大嶋慧介、上田明子、野田雄介
プロデューサー:尾崎裕和
制作統括:篠原圭、清水拓哉
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/fujoshi/