『シャザム!』なぜ心震わせる作品に? 人間ドラマによって生み出される真のヒーロー像
人間ドラマによって生み出される真のヒーロー像
本作で常に描かれていくのは、家族についての物語だ。ビリーがいろいろなトラブルを起こし、里親とうまくやっていけなかったのは、はなればなれになった実の母親への愛情と憧れがあったからだろう。だが、そんなビリーにも新しい家族ができようとしていた。何人もの里子が引き取られた大家族の家庭で、少しずつ彼の居場所が生まれ始めていたのだ。そんな、自分を見守ってくれる家族を守るため、ビリーはビルの屋上から跳躍し、変身の言葉「シャザム!」を叫び、強大な敵と戦う覚悟を決める。非常にエモーショナルな名シーンである。
ここで描かれているのは、純粋に人を守りたいと願う、熱い想いだ。ヒーローとは、ただパワーを持っているだけではなれない。損得とは関係なく他者のために尽力できる者を「ヒーロー」と呼ぶのではないだろうか。そう考えると、ヒーローであるためには、特別な力を持っている必要はない。ビリーを守るため里親になった夫婦や、ビリーの母親を見つけるために努力してくれる里子たちは、みんなそう呼ばれる資格があるはずである。だからビリーも、彼らを助けようと飛び出した瞬間に、初めてスーパーヒーローになったのだといえる。ヒーローの本質を表現した、このシーンまでのドラマを構築したことで、本作は“本格派”のヒーロー映画になったといえるのだ。
『シャザム!』は、早くも続編製作の準備が行われているとの報が流れている。ヒーローの本質に迫りつつ、ギャグの連続と人間ドラマによって全編で笑わせてくれ、さらに胸を熱くさせる本作。ここまでの出来ならば、続編が求められるのも当然のことだろう。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『シャザム!』
全国公開中
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
出演:ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、マーク・ストロング
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:http://shazam-movie.jp/