『ゲット・アウト』『Us』が米社会にもたらした衝撃 ジョーダン・ピールの恐怖と笑いの原点とは

ジョーダン・ピール監督の恐怖と笑いの原点とは

最大の恐怖、その正体

 最新作『Us』で主要人物に黒人一家を据えている理由を問われたピールは「黒人家族が主役のホラー映画を観たことがないということに気づいたからだ」と答えている。しかしその意図は、人種問題に留まらない人間の普遍性を問うことにある。

「彼らが主役であるという違和感を乗り越えたあとに観客が見つめるのは、人間そのものなんだ。『ゲット・アウト』とは違って人種問題に焦点を当てない本作の製作にあたり、私はこれまでのホラー映画で描かれてこなかったモンスターの創造に身を捧げた。そして行きついたのは、私たちにとって自分自身が最大の恐怖だというシンプルな真実だったんだ」

 これまでジャンルの枠に留まることなく、社会の中に潜む大きなねじれに向き合ってきたジョーダン・ピール。彼が最新作『Us』でみせた恐るべき存在は、得体のしれない幽霊や差別意識を秘めた白人、同族嫌悪する黒人ではなく、1番よく分かっているはずの自分自身が持つ悪の側面である。逃れようのないこのモンスターは、すべての観客を恐怖の当事者にするだろう。

参照

・CNN BUSINESS
https://edition.cnn.com/2019/03/22/media/us-movie-analysis/index.html
・ESSENSE
https://www.essence.com/entertainment/jordan-peele-credits-eddie-murphy-get-out-inspiration/
・Rolling Stone
https://www.rollingstone.com/movies/movie-features/director-jordan-peele-new-movie-cover-story-782743/

■菅原 史稀
編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。Twitter

■作品情報
『ゲット・アウト』
Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray:1,886円+税
DVD:1,429円+税 
製作:ジェイソン・ブラム
監督・脚本:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー
ユニバーサル映画
配給:東宝東和
(c)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

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