『バンブルビー』意外な監督の人選が、『トランスフォーマー』シリーズにもたらしたもの

『バンブルビー』意外な監督の人選が、『トランスフォーマー』シリーズにもたらしたもの

 第1作から第5作『最後の騎士王』まで、足かけ10年にわたって製作されてきた、実写映画版『トランスフォーマー』。ハリウッド映画最大級となる200億円規模の制作費をかけた超大作シリーズである。そのなかから、黄色い車に変身できる人気のオートボット(正義のロボット生命体)が主人公となるスピンオフ映画が、本作『バンブルビー』だ。制作費は本シリーズの半分ほどだが、十分に超大作である。

 そして、この企画に監督として抜擢されたのは、あの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016年)を撮った、アニメーション監督のトラヴィス・ナイトだった。ここでは、この意外な人選が『トランスフォーマー』シリーズに何をもたらしたのか、彼の作風をもとに考察しながら、本作の存在意義についても述べていきたい。

 本作は80年代を舞台に、シリーズ第1作の主人公サム(シャイア・ラブーフ)と出会う前のバンブルビーが経験した知られざる出会いを描く。バンブルビーと友情を深める少女チャーリーを演じるのは、『トゥルー・グリット』(2010年)や、『スウィート17モンスター』(2016年)で強い印象を残し、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)ではグウェン・ステイシーの声を担当、モデルや歌手としても活躍し、本作の主題歌も歌っているヘイリー・スタインフェルドだ。

 『スウィート17モンスター』の役が部分的に継続しているように、チャーリーは学校で“イケてる”存在ではないが、自分の世界を持っていて、多くの観客が共感できるキャラクターだ。車を整備するのが趣味なのは亡くなった父親の影響で、彼の遺したクラシックカーがその存在の大きさを象徴している。彼女は仲のよかった父親の死が心の傷になっており、新しい恋人と家族を作ろうとする母親を認めつつも、自分のなかではやりきれない葛藤を抱えていた。そんな揺れるティーンの心情を、スタインフェルドがみずみずしく演じている。

 父親との関係といえば、やはりナイト監督である。トラヴィス・ナイトがCEO(最高経営責任者)を務めるのが、アメリカのアニメスタジオ「ライカ(laika)」。実物の人形を動かしながら1コマずつ撮影していく「ストップモーション・アニメーション」という手法で、あたたかみのある手づくりアニメ作品を制作してきた。そんなスタジオの前身となるアニメ制作会社が倒産の危機にあるとき、スポーツ用品の世界的ブランド「ナイキ」の創業者フィル・ナイトが、息子トラヴィスが働いている会社に手を差し伸べ、権利を買い取った。そんな経緯があって出来上がったのが「ライカ」なのだ。

 しかしトラヴィス・ナイト監督は、ただの経済的な意味での“おぼっちゃま”なだけではない。父フィル・ナイトは若い頃、神戸でオニツカ社(現・アシックス)の運動靴「オニツカタイガー」に出会い、アメリカでオニツカタイガーを販売したことがナイキの成功の礎(いしずえ)となっている。息子のトラヴィスはその縁あって、少年時代に日本に来て、日本の様々な文化に魅了されたのだという。それが、ただの異国情緒へのあこがれだけではない傑作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』に決定的な影響を及ぼしている。

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