「kino cinema」開業で横浜は映画館激戦区へ 映画発信するホットスポットへと変貌遂げるか?

「kino cinema」は横浜映画シーンをどう変える?

 実は、数年前まではこのほどではなかった。2015年1月をもって閉館してしまったが、みなとみらい地区には、「109シネマズMM横浜」という映画館が存在し、みなとみらいエリアには3つのシネコンが鎮座し、三つ巴の様相を呈していたのだ。「109シネマズMM横浜」の閉館後、同館が担当していた公開作品は、みなとみらい地区に根を張る2館へ流れ込んだ。更には2016年に「横浜ブルク13」はIMAXを、「イオンシネマみなとみらい」は4DXシアターをオープンさせ、同エリアに他のシネコンを寄せ付けない盤石な体制を現在まで作りあげている。

 こう見ると、そこに分け入る形となる「kino cinema」のみなとみらい地区進出は、少々ハードルが高いものだと感じるかもしれない。しかし、みなとみらい地区は、観光地でありながらオフィスビルが集まるビジネスの起点でもあり、更にタワーマンションが立ち並ぶ居住区も兼ね備えている。観光地でありながら、ビジネスマンやファミリー層、シニア層など様々な人々がこの地を訪れる。ミニシアター作品を「kino cinema」が担うことで映画鑑賞の多様性がさらに広がることだろう。

 また、2020年には、「ティ・ジョイ横浜」がオープンする。横浜駅は、1928年に現在位置に移転して以来、一度も全工事が完成した状態になったことはなく、約90年以上、絶えることなく駅構内や周辺のどこかで様々な工事が行われてきた。永遠と工事が終わらないため、「日本のサグラダファミリア」と形容され、更にはその様子に着想を受けたSF小説が発売されるなどしてきたが、2020年に「横浜駅西口駅ビル計画」が完了し、大型ターミナルビルへと生まれ変わる。「ティ・ジョイ横浜」は、このターミナルビル内8~10階に鎮座することとなる。「横浜ブルク13」はティ・ジョイが運営に携わる劇場のひとつだが、電車で1駅しか離れていない土地に2つの映画館を構えるのは、極めて異例のことだろう。それだけ横浜エリアの集客力を重要視していることが伺える。

 駅直結というのは、映画館にとって大きな強みである。昨年オープンした「TOHOシネマズ日比谷」や、コレド室町に鎮座する「TOHOシネマズ日本橋」、大阪駅直上の「大阪ステーションシティシネマ」、昨年日本で初めてのドルビーシネマを有することになった博多駅直結の「ティ・ジョイ博多」などは、映画館が乱立するエリアにおいて圧倒的な地の利を得ることとなる。

 2020年には、ぴあ横浜アリーナが開業予定など、音楽文化の発信への期待も高まる。今後も続く開発計画含めて、横浜エリアは、新時代の文化発信のホットスポットとして要注目だ。

(文=安田周平)

※「kino cinema」の「e」はアクサンテギュ付きが正式表記

■劇場情報
「kino cinema 横浜みなとみらい」
4月12日(金)オープン予定
公式サイト:https://kinocinema.jp/

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