『後妻業』木村佳乃×木村多江、2度のケンカの後に見せた影の表情 宮本浩次「冬の花」が切なく響く

『後妻業』W木村、2度のキャットファイト

 この魅力的なアドリブ合戦があるからこそ、小夜子と朋美の心情に触れるシーンではシリアスな空気が際立つ。劇中盤、笹島を殺した犯人が小夜子ではなく通いの家政婦だったことが判明する。小夜子を脅す手立てがなくなった朋美に小夜子はぼそりと「殺してあげたいって思うたよ」と発する。”殺してあげたい”という台詞は恐ろしい響きでもあるのだが、お金はあっても孤独だった笹島に寄り添った小夜子の心情にあったのは、孤独から笹島を救おうとする気持ちのようにも見える。直前まで強烈な変顔も見せていた木村だが、笹島を想う小夜子の気持ちが伝わる伏し目がちな微笑みもまた印象的だ。

 朋美もまた、小夜子の前では自信のある表情を見せるが、夫・司郎(長谷川朝晴)の前では強気な表情を見せることができない。司郎は不倫が発覚した後の出張で、不倫相手を同行させている。2人の関係が修復不可能だと悟った朋美の「もう終わりにしよう」という言葉は虚しさに満ちていた。深々と頭を下げ、朋美の顔を見ようとしない司郎に対し、怒りや悔しさよりも、もう戻れないという現実を実感しているような木村多江の表情は悲しくも魅力的だ。

 コミカルなシーンでは潔いほどに面白く、シリアスなシーンでは小夜子と朋美がそれぞれに抱える悩みや不安がひしひしと感じられるよう演じ分ける木村佳乃と木村多江。視聴者の間では、宮本浩次が歌う主題歌「冬の花」が後妻業の世界観にマッチしていると評判だ。それは飄々とした表情を見せていたかと思えば、過去の夫たちを思い浮かべ表情に影を落とす小夜子が魅力的なことも要因だろう。次回から最終章に突入する。小夜子と柏木、朋美と本多に訪れる結末が気になるところだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『後妻業』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜21:54放送
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、伊原剛志、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる
原作:『後妻業』 黒川博行(文春文庫刊) 
脚本:関えり香
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
企画・プロデュース:栗原美和子(共テレ)
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/gosaigyo/index.html

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