『トクサツガガガ』が伝える、他者を認める寛容さ 目指したのは「正義にこだわらない」ドラマ

『トクサツガガガ』Pが語る、作品のテーマ

 さらに、これまで出演してきたドラマなどから、演技だけでなく、本人の持っている「嫌味のない感じ」「人柄の良さ」「素直さ」が、誰からも愛されること。かつ「原作上のヒロインの『筋の通し方』に通じる雰囲気があったこと」も決め手だったそう。

 ヒロインは同じく特撮オタクで30代の吉田さん(倉科カナ)や小学生男子のダミアン(寺田心)、アイドルオタクの30代の北代さん(木南晴夏)や大学生のみやびさん(吉田美佳子)、美少女アニメオタクの任侠さん(竹内まなぶ)らと、年齢・性別・ジャンルを超えた交流を深めていく。彼らを「オタク戦隊」とするなら、小芝の放つ「戦隊レッド」感は、まさに「誰からも愛される」人柄から滲み出る部分だろう。

 ちなみに、原作ではヒロインは26〜27歳。しかし、小芝は21歳と若く、年齢的な部分だけが引っかかる点だったが、それは大きなファクトではないと判断。

 「ドラマでは原作者にも了承を得て、24歳としました。24歳でも、母親に結婚を急かされる年齢としては早いですが、あのお母さんのキャラクターを考えると不思議ではないと」

 本作では、一口に「オタク」と言っても、ジャンルや価値観・スタンスの違いは人それぞれであることを丁寧に描いているのも、素晴らしい。

 「特撮や、アイドルなど、『何かが好きで大事にしている』という共通点はあっても、大事であるがゆえに隠している人もいれば、公言している人もいる。でも、自分と違う価値観の人も、それはそれで認める寛容さは、原作の世界観でもあって。悪人を出すのは、(原作の)丹羽さんが嫌がったんですよ。だから、ドラマにも悪い人が出てこないし、他人を攻撃しない、お互いに認め合っている。自分が大切に思っているものも肯定してくれるということが共感を呼ぶんだと思います」

 ところで、2月22日放送分ラストでは、とうとうヒロインの特撮オタクぶりが母親にバレてしまい、直接対決になるハラハラの展開に。娘の好きな特撮を嫌い、女の子っぽく可愛いモノを押し付け、自分の思い通りにコントロールしようとする母親は、「毒親」「ジェンダー」など、現代的なテーマでもあるが……。

 「確かにお母さんとの関係は大きな軸です。でも、ジェンダーや毒親というのを前面に出したり、お母さんの問題に集中しすぎたりするのでは、世界観がブレてしまう。だから、お母さんとの対立はあるけど、そこを色濃くし過ぎないことは心がけました。『仲間がいればうれしい』とか『自分と違う事柄に対する寛容性が持てるかどうか』という背景に伝わればいいと思っていました」

 ヒロインの日常を描くだけでなく、特撮部分がはさみこまれることによって、そうした母と娘の対立がシリアスになりすぎず、ゆるやかでおかしく見えるという「劇中劇」効果も生まれている。

 いよいよ最終回。ヒロインと母親との関係を含め、すべての愛すべきキャラの行方に注目したい。

(取材・文=田幸和歌子)

■放送情報
ドラマ10『トクサツガガガ』
NHK総合にて毎週金曜22:00〜22:44(連続7回)
原作:丹羽庭『トクサツガガガ』(小学館)
脚本:田辺茂範
音楽:井筒昭雄
出演:小芝風花、倉科カナ、木南晴夏、森永悠希、本田剛文(BOYS AND MEN)、武田玲奈、内山命(SKE48)、寺田心、竹内まなぶ、松下由樹ほか
演出:末永創、新田真三、小野見知
制作統括:吉永証
提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/nagoya/gagaga/

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