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『ハナレイ・ベイ』インタビュー

松永大司監督が明かす、吉田羊に対する演出方法 村上春樹原作『ハナレイ・ベイ』映像化の必然性

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 村上春樹の短編小説集『東京奇譚集』(新潮文庫)に収録された小説を、吉田羊主演で映画化した『ハナレイ・ベイ』のBlu-ray&DVDが2月27日にリリースされる。サーフィン中の事故で、一人息子を失ったシングルマザーの10年間の機微を、美しいカウアイ島、ハナレイ・ベイの景色とともに繊細に描いている。

 本作でメガホンをとったのは、ドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』(11年公開)や『トイレのピエタ』(15年公開)などを手掛けた気鋭の映画監督・松永大司だ。村上春樹独特の世界観を、多くの余白を持って表現した作品だけに「見る人を選んでしまうかも」と思ったという松永監督に、Blu-ray&DVD発売のタイミングでインタビュー。取材前にBlu-ray&DVDの特典音声となる吉田、佐野玲於と共にオーディオコメンタリーの収録を終えたばかりの松永監督は、映像を振り返って改めて「良い人たちキャスティングしたなと、これ間違いないですよね」と強く語り、映画公開から受けた思わぬ反響や、撮影秘話などをじっくり話してくれた。(磯部正和)

「ハナレイ・ベイ」に感じた映像化の必然性


ーー映画が公開して時間がたちましたが、松永監督にはどんな反響が届いていますか?

松永大司監督(以下、松永):すごくたくさんの起伏がある作品ではないという性質上、見る人を選ぶのかなと思っていたんです。でも、若い人が分からないなりに、すごくポジティブな感想を述べてくれていたのは、自分のなかではとても良い驚きでした

ーー確かに作品に余白が多く、捉え方の難しい部分はあったかもしれませんね

松永:いま44歳なのですが、僕ら世代が若いときに観ていた映画やテレビというのは、ある意味で、作り手が視聴者を信じて、あまり説明過多なものづくりをしていなかったような気がしているんです。いまも作り手の思いは変わっていないのでしょうが、どこかで必要以上に情報を投げかけているような気がして……。そのぶん、こういう余白の多い映画は、若い子には難しいと思っていたんです。でも若い子なりに、一生懸命アンテナを張って受け止めてくれていたんだなと実感できたのは、自分のなかでは大きな発見で、今後の希望に繋がりました。

ーー村上春樹さんという独特の世界観を展開する作家さんの原作を映像化するということに対して、なにかこだわりはあったのですか?

松永:小説ってそこでしっかりと完結しているものだと思うんです。なので、しっかりと映像化する必然性がないと、やる意味がない。「ハナレイ・ベイ」を映像化する際も、映画だからこそ伝わるものはなにかというのは、シナリオを書くときにしっかり考えました。特にこの作品は主人公が息子の死によって、10年間ビーチに通い、砂浜でぼーっと海を眺めたり本を読んだりする描写なんです。小説だと数行のところをどう映像で描写するのかはかなり悩みました。

ーー映像化の必然性を一番感じたのはどの部分ですか?

松永:「ハナレイ・ベイ」のデカさですね。実際カウアイ島にいったとき、本当になにもなくてデカイなと感じたんです。文字でその広大さは想像することしかできませんが、大きなスクリーンで自然の大きさを映すことは、映画ならではのトライだと思いました。だから撮影は、僕が素晴らしいと思っているカメラマンの近藤龍人にお願いしたんです。

ーー実際のハナレイ・ベイで撮影することに大きな意味があると?

松永:そこにはこだわりました。ただ、カウアイ島での撮影というのは、距離的な問題もあって、オアフ島よりも数倍はお金がかかるんです。現地のプロデューサーは「オアフ島でハナレイ・ベイに似たビーチを探した方が、値段も安くすむから撮影日数も増える」と、盛んに代替えの場所を提案してくるんですよ(笑)。でもそこだけは譲れなかったんです。

俳優が役に没頭できるための環境作り

ーーそこまでこだわった場所での撮影というのは、俳優陣にも大きな覚悟が必要だったのではないですか?

松永:もちろんそうです。自然には嘘がないから、そこに立つ人間が嘘をついてしまったら絶対負けると思いました。だから役者に対しては非常に高い要求をするつもりでしたし、それができる人という観点でキャスト選びはしました。

ーーそれが吉田羊さんだったのですね。

松永:シナリオを書いた段階で、プロデューサーとは誰がいいかという話をしました。その際、吉田さんにお願いしようということで一致しました。映画の強度として、もちろん誰もが知っている女優さんであることは大切なことなのですが、ある程度認知されていて、母親ができる年齢の女優さんという条件だと、視聴者に新しい面を見せることは非常に難しい。でも吉田さんなら、これまでのパブリックイメージを突き破るだけの力があるのではと思ったんです。

ーー吉田さんのどういう部分に力を感じたのですか?

松永:これまでの作品を観て感じたということではなく、直感ですかね。でも(吉田の息子・タカシ役の)佐野玲於がいいと思ったのも、『トイレのピエタ』で野田洋次郎がいいと思ったのも、直感でしたからね。

ーー吉田さんには撮影地のハワイまで一人で来てほしいとお願いしたと聞きました。

松永:この映画では、突然息子を亡くした女性の悲しみや孤独の10年間を描くわけですが、撮影期間が非常に短いなか、どこまでその感情に持っていけるかが勝負になるわけです。そこで俳優が役に没頭できるための環境作りをするのも監督の仕事。もちろん、主演女優をハワイまで一人で来て欲しいなんてお願いするのはドキドキものですよ。でもしっかりとこちら側の意図を汲んでいただけました。その点に関しては吉田さんのマネージメントサイドには、非常に感謝しています。吉田さんの心意気も感じましたし、こちら側も容赦なくいこうと思えました。

ーー現場ではかなり追い込まれたと吉田さんは話していました。

松永:映画を観ていて、役者の芝居が良くないなと思ったとき、普通は監督がダメだと思わないですよね。大体は「役者が下手だ」と言われてしまう。僕は、映画が公開されたあと、役者の評価が悪いことはとても嫌なんです。作品の好き嫌いはあるとしても、役者はちゃんと評価してほしい。そのためには厳しいことも言います。優しくして出来上がったものがイマイチと言われたら、役者さんに申しわけないですから。吉田さんにもかなりいろいろ言わせていただきました。でも最後までへこたれずに作品を引っ張ってくれたと思います。

      

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