『トクサツガガガ』特撮オタクがしびれた実写化 “好き”を楽しむ尊さや処世術を学べる物語に

 これほどまでにこだわり抜かれた『トクサツガガガ』の「特撮シーン」だが、実はこのドラマ、物語の本質は「特撮」そのものではない。特撮オタクである主人公を通し、好きなものを年齢・性別を超えて楽しむ尊さや、時に立ち塞がる他者との軋轢への処世術、人間関係と趣味嗜好の距離の取り方など、実はとても普遍的な「価値観」の物語が展開される。「好き」がもたらしてくれる活力と学び。しかし、そんな「好き」を無意識に阻害してくる他者。それは、趣味が多様化する現代において、大なり小なり、多くの人が抱える悩みと言えるだろう。

 しかし、だからこそ、このドラマは「特撮シーン」にこだわる。主人公・仲村叶の「好き」こそが、他でもない「特撮」なのだ。「特撮シーン」にこれでもかと情熱を注ぎ込み、妥協せず、ハイクオリティに仕上げることで、それを受けて展開される「価値観」の物語が説得力を増していく。「特撮シーン」の出来こそが、作品全体を骨太く創り上げていくのだ。劇中劇こそが、劇を面白くする。小芝風花をはじめとするキャスト陣のいきいきとした演技とも呼応し、毎週びっくりするほどの見応えを提供してくれた。「好き」と「価値観」を描く、極上の「実写化」である。

 物語は、主人公と母親との「好き」をめぐる対立がクライマックスとして設定された。「理解してもらえなかった側」である主人公が、自身の「好き」の根源と改めて向き合い、「理解する側」への一歩を踏み出す。あの日、幼い自分の心を熱くしてくれたヒーローに背中を押されながら、母親との和解という「最終決戦」へ挑む。「分かり合えない間柄」という人間関係の難しさに、ひとつの答えを示したエンディングとなった。

 しかし、一介の特撮オタクとして、ぜひとも続編の制作を熱望するところである。原作では、ゴジラやガメラを模した大怪獣・ダゴンや、ウルトラマンのようなソールマンというヒーローが登場することもあり、続編では東宝や円谷の協力を得て迫力のミニチュアワークを展開して欲しい、と願うのは、いささか欲が過ぎるだろうか。

■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』Twitter

■放送情報
ドラマ10『トクサツガガガ』
NHK総合にて毎週金曜22:00〜22:44(連続7回)
原作:丹羽庭『トクサツガガガ』(小学館)
脚本:田辺茂範
音楽:井筒昭雄
出演:小芝風花、倉科カナ、木南晴夏、森永悠希、本田剛文(BOYS AND MEN)、武田玲奈、内山命(SKE48)、寺田心、竹内まなぶ、松下由樹ほか
演出:末永創、新田真三、小野見知
制作統括:吉永証
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/nagoya/gagaga/
写真提供=NHK

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