“月”=塾を舞台に描く子どもたちの教育 高橋一生×永作博美『みかづき』原作小説から読み解く
「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」
タイトルの『みかづき』とは、千明のこの言葉から採られている。“太陽”にあたる学校を舞台としたドラマや映画は数限りなく作られてきたが、“月”である塾を舞台にした作品はそれほど多くはない(受験をテーマにしたドラマは少なくないが)。システムとしての教育、ビジネスとしての教育からこぼれ落ちてしまう子どもたちに寄り添い、かすかな光をあてていく塾という存在がどのように描かれていくか楽しみだ。
不安材料といえば「全5回」と尺が短いところだろうか(1話50分)。先述のとおり、長大なストーリーなのでダイジェスト風になってしまう。正直なところ、朝ドラで見たいぐらいだ。文芸評論家の斎藤美奈子氏は文庫版の解説で、『みかづき』の物語は小篠綾子とデザイナーになったコシノ三姉妹の物語(つまり『カーネーション』だ)を想起させると指摘している。なお、『みかづき』の脚本を担当するのは2019年の朝ドラ『スカーレット』(共にNHK)を執筆する水橋文美江である。
予告編を見ると、ドラマの内容は深刻になりすぎることなく、どこかコミカルな味付けがなされている模様。森絵都の原作小説にあるリーダビリティの高さを活かすようなつくりになっているのではないだろうか。エンディングではなんと高橋と永作ら出演者たちがダンスを披露するらしい。原作の分厚さを見れば、重厚さを期待する向きも多いかもしれないが、あまり身構えることなく楽しみたいと思う。
■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter。
■放送情報
土曜ドラマ『みかづき』
NHK総合にて2019年1月26日より毎週(土)21時〜放送(連続5回)
脚本:水橋文美江
音楽:佐藤直紀
出演:高橋一生、永作博美、工藤阿須加、大政絢、壇蜜、黒川芽以、風吹ジュン ほか
演出:片岡敬司(NHKエンタープライズ)ほか
制作統括:陸田元一(NHKエンタープライズ)、黒沢淳(テレパック)、高橋練(NHK)