年末企画:宇野維正の「2018年 年間ベスト映画TOP10」 次の時代はもう始まっている

宇野維正の「2018年映画TOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優・女優たちも紹介。映画の場合は2018年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第1回の選者は、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正。(編集部)

1. 『君の名前で僕を呼んで』
2. 『15時17分、パリ行き』
2. 『ファントム・スレッド』
4. 『ヘレディタリー/継承』
5. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』
6. 『アナイアレイション -全滅領域-』
7. 『きみの鳥はうたえる』
8. 『夜の浜辺でひとり』
9. 『ウインド・リバー』
10. 『寝ても覚めても』

 映画とテレビシリーズを合わせての2018年のベスト1は、(昨年の『ストレンジャー・シングス』シーズン2に続いて)アンドリュー・スタントンまで演出に参画するようになった『ベター・コール・ソウル』シーズン4。しかし、昨年までの数年間のように「今は映画よりもテレビシリーズの方が面白い」と無邪気に主張してばかりもいられなくなってきた1年だった(それでも映画と同じ熱量でテレビシリーズを追ってない人が「話にならない」のは変わらないが)。毎年シーズンを重ねている人気シリーズ作品に、明らかな疲弊と惰性を見て取れる作品が多くなってきたのは映画界と同じ。『ゲーム・オブ・スローンズ』とマーベル・シネマティック・ユニバース・フェイズ3と『スター・ウォーズ』現行3部作に決着が着く2019年は、「2010年代最後の年」という意味以上に大きなターニングポイントとなるだろう。

 そんな時代にあって、映画に求めるはどうしたって「より映画的であること」になる。ごく一部のフィルム原理主義を貫いている映画作家の作品を除いて、映画とテレビシリーズの作品のルックに差異がなくなった現在、重要なのは映画館という環境、2時間前後という尺を踏まえて、いかに映画ならではの「速さ」、あるいは映画ならではの「遅さ」で、作品の世界に引き込んでいくか。今年のベストリストに挙げたのは、気がつけば(アメリカと中国以外ではNetflixでの公開となったアレックス・ガーランド『アナイアレイション -全滅領域-』も含め)そんな「映画的時間」を強く意識させられる作品が中心となった。例えば、スティーブン・スピルバーグ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』『レディ・プレイヤー1』やリドリー・スコット『ゲティ家の身代金』にも大いに魅了されたが、鑑賞後に「これ以外のストーリーテリングの方法もあったのではないか?」という思いが去来した時点で(実際に『ゲティ家の身代金』には、同じ題材、同じタイミングで、ダニー・ボイルが主要エピソードの演出を手がけたFXのテレビシリーズ『Trust』も存在している)、リストからは漏れることとなった。来年73歳になるスピルバーグや82歳になるスコットに、体力的にも演出家として今からテレビシリーズへの進出を望むのが無理な相談なのは重々承知しているが。

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