『ドロ刑』早くも続編期待の声 中島健人、遠藤憲一を逮捕し“スタートライン”に立つ

『ドロ刑』一人前になった中島健人

 泥棒の気持ち、それはつまり追うべき存在である煙鴉のねらいのことであり、それを理解できずに、ただ友情と信頼関係のほつれに悩んでいた斑目。しかし彼が“ドロ刑”としての自分の責務を果たす覚悟を決めたことで、そのねらいにたどり着くことができ、煙鴉の気持ちになることができた。それを象徴したのが、煙鴉をおびき寄せるために13係総出で一芝居打ったクライマックスだ。煙鴉は自分をサポートするのと同時に、目的遂行のために動かそうとしているのだと理解した斑目は、誤った方向に進むと見せかける。13係の面々が煙鴉を取り囲んだときに、煙鴉が一瞬見せる微笑みは、斑目が「徹底的に煙鴉の気持ちになった」ひとつの成果といえるだろう。

 振り返ってみると第1話から第6話にかけての前半戦で、様々な泥棒の手口と向き合い方を学び、徐々に13係の団結力を高めていき、そして第7話の「病院」というキーワードをフラグにして終盤は一気に煙鴉との攻防戦へともつれ込み、チームプレイで全ての謎を解き明かす。斑目と煙鴉の出会いを“起”として、6話までを“承”、7話のラスト以降が“転”、そしてすべてが明かされる最終話が“結”という作りになっていたが、大きく捉えれば前半を“起”で、後半を“承”としてみることもできる、まだまだ先があってもいいプロットだ。

 ラストシーンで斑目は煙鴉に「(刑期を終えて)出てきたらまた色々教えてください」と囁く。おそらく斑目自身は、煙鴉を逮捕したことでようやく一人前の“ドロ刑”になるためのスタートラインに立てたのだと感じているのだろう。原作の設定の一部だけをすくい上げてほぼオリジナルの展開で進行した本作は、虹の見える窓から煙鴉が忽然と姿を消したところで幕を閉じた。早くも続編を期待する声が上がっているのも充分頷ける、ここ最近の連続ドラマの中でもきわめてスマートな、実に魅力的な幕切れではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『ドロ刑 -警視庁捜査三課‐』
日本テレビ系にて毎週土曜22:00~22:54放送
出演:中島健人(Sexy Zone)、遠藤憲一、石橋杏奈、中村倫也、江口のりこ、野間口徹、田中道子、生島翔、丸山智己、板尾創路、稲森いずみ
原作:『ドロ刑』福田秀(集英社「週刊ヤングジャンプ」 連載)
脚本:林宏司
音楽:木村秀彬
主題歌:Sexy Zone 「カラクリだらけのテンダネス」(ポニーキャニオン)
演出:大谷太郎、中島悟(AXON)、高橋朋広
制作協力:The icon
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dorokei/
番組公式Twitter アカウント : @dorokei_ntv

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