『けもなれ』は“名も無き関係性”を描く 野木亜紀子が「ラブかもしれないストーリー」に込めた思い

なぜ『けもなれ』は“ラブかもしれない”ドラマに?

 名もなき関係性といえば、ツクモ・クリエイト・ジャパンで任命された「特別チーフクリエイター営業部長」も、九十九社長(山内圭哉)なりの晶との向き合い方だったのかもしれない。これまでの営業アシスタントとも、秘書とも、単なる営業とも、異なる特別な存在として、この会社にいてほしいという願い。だが、どう思っていたとしても、言い方が自分よがりでは気持ちは相手に通じないのだから、あの人も不器用な人だ。

 誰もが、正解や、マニュアルのない人生を生きている。慣習に沿って安定して生きたい人もいれば、しがらみを取り払って革新的に生きたい人もいる。それぞれの異なる欲求を吠えて、噛み付き合っていても、互いに血を流すだけだ。いつだって“その人”という新種と出会っていることを念頭に置き、新しい意見を尊重し、その人と自分だけのオリジナルの関係性を築いていくことが、これからの時代に求められているのではないか。

 もちろん、ときには「間違えた?」と立ち止まることもあるかもしれない。飲み仲間でも、恋人でもない、居心地のいい存在を、なんと表現すればいいのか、と頭を抱えることも。だが、そんな新たな概念の構築そのものを一緒に楽しむことができる人と出会えたら、人生はもっと生きやすくなるのではないか。このドラマが「どんなドラマ?」と言われても、うまく説明できないのも、そこにつながっているように思う。しいて言うなら、これまで名前がつかなかった愛を発見する“ラブかもしれない”ドラマ。そして、そんな一つひとつのラブを大事にすれば、「生きていける」「ひとりじゃない」と提示してくれるドラマ、ということになるのだろう。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/

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