『大恋愛』戸田恵梨香とムロツヨシが手に入れた“夫婦の形” 試練乗り越えた2人が向かう未来とは

『大恋愛』試練乗り越えた2人が向かう未来

 小池徹平演じる公平の登場は、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)の世界に不穏な空気を漂わせた。尚(戸田恵梨香)にキスをしたり、真司(ムロツヨシ)がいない隙にこっそり尚に近づいたり、睡眠薬で尚を眠らせようとしたり……。尚と真司の前にふと現れた彼の存在は、観るものに緊張感を与えたものだ。

 ただ、この公平という謎に包まれた存在は、描かれるべくして描かれたキャラクターであるように思える。作品に緩急をつける役割以上に、彼の存在には意義がある。というのも、公平の登場は尚と真司にとっての乗り越えるべき試練を与えたように見えるからだ。第8話の終盤で、公平は真司に次々と辛辣な言葉を浴びせる。

「真司と尚は全然対等じゃないんだもん」
「あんたにとって尚ちゃんは小説の道具だろ」
「あんたは尚を利用して自己実現してるだけだよ」

 それでも、真司はすぐさま否定の言葉を公平にぶつけることができなかった。公平からは「図星?」とまで言われてしまう。もちろんこれまでの話を観ていれば分かるように、真司は尚のことを道具だなんて思っていないし、尚を利用しようなんていう邪な気持ちがあるわけない。ただ、公平は真司に “ひょっとしたら、公平の言っていることもありえるかもしれない”という恐ろしい可能性をグロテスクに見せつける。悪魔のような囁きは、“ひょっとしたら……”という考えたくもない可能性を嫌でも考えさせるのだ。特に、公平の言う“対等じゃない”という言葉は真司を震えあがらせたはずだ。尚は病を抱えているが、真司は抱えていない。公平が言うように、同じ病気を持つもの同士でしか愛し合えないのだとしたら……。そこを突かれた真司が思わず立ちすくんでしまうのも無理はない。

 象徴的なのは、怒りに震える真司が公平に殴りかかる前に、尚がやってきたことだ。あと一歩で、真司は公平を殴っていた。あの場で殴っていたら、ひょっとするとそれは公平の思う壺だったのかもしれない。殴ればせいせいするであろう。でも、それは何の解決にもならない。2人は公平の“対等じゃない”という突きつけに対するアンサーを用意する必要があった。

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