『まんぷく』松坂慶子、“武士の娘”として物語を牽引 勇ましくもチャーミングな鈴さんの魅力

松坂慶子、“武士の娘”として『まんぷく』を牽引

 先ほど鈴のことを“お茶目”だと書いたが、忠彦(要潤)の言うように“人間らしい”という表現の方が的確であるかもしれない。克子(松下奈緒)の住む家を訪れた鈴は、忠彦に自分をモデルにした絵を描いてもらう場面があった。そこで忠彦は鈴にこんなメッセージを伝える。

「僕かて、頭にくることも、がっかりすることもあります。お義母さんとおんなじように。せやけど、世の中には、人生には素晴らしく輝く一瞬がある」

 そして、忠彦は今の鈴に「輝いていますよ」と伝える。家出したことに関しては、「正直で良いじゃないですか。“人間らしい”」と言って、鈴のことを肯定的に評価する。いかにも忠彦らしい寄り添い方である。やれと言われたことに対して、たとえ嫌なことがあっても二つ返事で引き受けるのではなく、自分の主張ははっきりと伝えられること。確かに“人間らしい”という言葉がふさわしい。きっと鈴は忠彦の言葉に救われたことだろう。人間らしさの肯定が必ずしもわがままだとは言い切れない。輝く自分を認めるためにも、ある程度は“人間らしく”いてもいいはずだ。

「人生でいろいろ経験してきた深みもあるし、少女のような可憐さもある」という台詞もまた、忠彦が鈴の魅力を表現した言葉であるが、まさしくその通りである。“武士の娘”と名乗るだけあって、勝気なところはとことん勝気でありながら、ときに繊細で純粋な一面もある。うれしいときは子どものように喜び、嫌なことははっきり「嫌!」と言う。人から誤解されることがあるかもしれないが、そんなキャラクターの中にこそ、時に勇ましく、時にチャーミングな鈴さんの魅力がふんだんに詰まっているのだろう。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、瀬戸康史、中尾明慶、橋爪功、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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