菊地凛子のキスが意味するもの 『獣になれない私たち』が投げかける“自分基準”
「車がビュービュー行き交っている道路で、信号も何もないんだけど、ワッて飛び出して、ワーーーッて反対側まで渡りたーい!って思うことない?」
『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の第3話では、いよいよ“獣”代表の呉羽(菊地凛子)が、本領発揮。野生の勘を信じて突き進む強さと、危うさが浮き彫りになった。
「危ないですよね、迷惑ですし……」冒頭の呉羽の問いに、“獣になれない”代表の晶(新垣結衣)は苦笑いでこう答える。行きたい道があれば、どんなに難しい道だとしても走り抜けたくなる呉羽と、道を渡るのは信号が青になってからという常識を疑わない晶。もちろん現代社会においては、晶の方が正しいのだろう。だが、その信号がずっと赤のままだったら? ずっと待ち続けるのだろうか。脳内に点灯した信号の赤い光から、晶の結婚への道を阻む朱里(黒木華)の存在をつい思い浮かべてしまう。
「要は、どうしたいかって話!」(呉羽)なのだ。赤信号が変わるのを待ち続けている、というと柵にとらわれているように聞こえるが、裏を返せば青信号になって安全に渡りたいという晶の意志でもある。“危なくないように、迷惑がかからないように、自分の行きたい道が拓かれたらいいな”というのが晶の本音。朱里が居座り続けていることに、困っている様子を見せている京谷(田中圭)も、また然り。晶のことを「愛している」という言葉も、朱里の自立を助けたいという気持ちも嘘ではないが、絡み合った糸をほぐすように本心を紐解いていくと、“なるようになったらいいな“という思いが透けてみえてくる。
しかし、そんなオートマチックに幸せになれれば、誰も苦労しない。ニコニコとしていれば、全てが報われる、なんていう夢物語はありえないのだ。自由の女神だって険しい顔をしているのだから。「自由を手に入れるには、必要なんだよ~、闘いが」と呉羽の言う通り、みんなそれぞれの自由を、幸せを、権利を求めて、いつだって闘い続けている。
ときには、目の前の道を横断する意志を手を挙げて示し、行き交う車を止める勇気も必要だ。それを迷惑をかけるから……と尻込みしていたら、いつまでも道の向こうにはいけない。ときには、手を挙げても車が止まる気配がないこともあるだろう。そこでぶつかってもいいというほど強引に道を渡るか、それとも「今じゃない」と流れを読んで落ち着くタイミングを見計らうか。その感覚も、渡ることを他人のタイミングに任せてたら、鈍っていくのかもしれない。