新垣結衣と黒木華の姿は他人事ではない 『獣になれない私たち』タイトルに込められたもの

『獣になれない私たち』タイトルに込められたもの

 運命の人と出会うと頭の中で鳴る鐘の音。それは、ある人にとっては歯車が静かに動き出す音かもしれないし、ある人にとってはビビビッという放電する音のようなものかもしれない。きっと人はそれを、“野生の勘”と呼ぶのだろう。

 『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の第2話。結婚にも、別れにも踏み出すことができない晶(新垣結衣)は、恋人の京谷(田中圭)に「他の人を好きになりたい」とつぶやく。“恋がしたい”それは、“生きる力がほしい”に限りなく近い嘆きだ。

 そして、毒舌会計士の恒星(松田龍平)と共に、直感と感情で動ける呉羽(菊池凛子)が、“恋に落ちたときに聞こえる鐘の音”に思いを馳せる。一体、どんな音が鳴るのだろうか。呉羽が「白楽にある聖アンデレ教会の鐘の音に近い」と言うと、ふたり揃ってスマホで検索を始めるのだった。

 わからないことは、即ググれ。いつの間にか、呼吸するかのごとく、ネットで答え合わせする行動を取っていることに気づかされる。もちろんインターネットは、人類が長年かけて手に入れた叡智。とても便利で、大好きだ。だが、同時にそれは恒星が言うように「脳が発達して考える力が増すほど直感は曖昧になっていく」ものでもある。明日の天気も、目的地へのルートも、気になる健康情報も、この先の生き方指南も……そこにすべての答えがあるような気にすらなって、自分の感覚を信じる力が衰えてはいないだろうか。

 例えば、雨が降り出しそうな空の色。季節の移り変わりを知らせる風のニオイ。最短ルートでない寄り道。“今日はいいことがあるかもしれない”という予感。“この人とは何か縁があるのかも”というときめき。そして、“こっちの道を通るのはやめておこう”という第六感。自分にとって何が気持ちのいいことなのか。仮に多くの人が発信する正解と違ったとしても、自分にとって“これがいい”と確信できること。それこそが、頭の中で鳴り響く鐘の音なのだ。

 そう考えると、“恋に落ちる”というのは進化の過程で失った、ひとつの能力なのかもしれない。同様に、何が自分にとって“道を踏み外す”脅威になるのか、を嗅ぎ分ける感覚も鈍っているように思う。ここにいていいのか。それを嗅ぎ分けることは、獣にとって生死を分けるほど重要だ。

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