大谷亮平、死にゆく妻を看取る名演技 『まんぷく』小野塚真一役から滲む誠実さ

大谷亮平、『まんぷく』で名演技

 10月1日よりスタートした『まんぷく』(NHK総合)は、第2週「…会いません、今は」から大きな山場が訪れた。ヒロイン・今井福子(安藤サクラ)の姉・咲(内田有紀)の死だ。『まんぷく』のストーリーは、福子とのちに彼女の夫となる立花萬平(長谷川博己)がメインになるが、第1話から並行して丁寧に描かれてきたのが、今井家における咲の存在。その隣にいたのが、咲の夫・小野塚真一(大谷亮平)だ。

 「武士の娘」が口癖の今井家の母・鈴(松坂慶子)は気難しい性格で、咲の婚約も仮病を使ってまで長引かせる始末。“ニコリともしない冷たい人”と鈴が真一の第一印象を話す一幕があるが、それは天邪鬼な母なりの娘への優しさで、真一はどんな時も咲を思いやる優しい男性だ。大手企業に勤めていながら、結婚式は身内だけで慎ましく、そう咲に話したのはきっと決して裕福ではない今井家を思ってのこと。堅実で落ち着きのある真一の姿は、福子にとっても大好きな姉にぴったりの相手であることが、結婚式のスピーチにて明かされている。宝飾屋で働く咲のもとに真一がサプライズで現れ、「指輪が見たいんですが。結婚指輪です」と告げるシーンからは、男性らしい一面も忘れない、今井家自慢の夫であることが示されていた。

 挙式を終えた3年後、1941年(昭和16年)に咲は体調を崩し、咳き込み始める。真一は会社を早く切り上げ、家で休む咲の看病に尽力した。結核の病が進行し、病院に入院した咲の隣にいたのは、真一だった。咲が予断の許さない状態であることを夫として1人知り、最期を看取った際も、妻の右手をギュッと強く握る。人口呼吸器を取った咲の第一声「ごめんなさい……あなた……」からは描かれていない2人の闘病の日々を、むせび泣く真一の姿からは咲への変わらない愛を想像させた。

 真一を演じる大谷亮平と言えば、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)での、風見涼太役の印象が強い。津崎平匡(星野源)の会社の後輩で、結婚に興味なし。けれど、津崎と契約結婚の関係にある森山みくり(新垣結衣)をシェア婚として家事手伝いとして雇いアタック。やがて、みくりの伯母・土屋百合(石田ゆり子)と恋仲に発展していく。彼が演じる小野塚真一と風見涼太は、誠実さに関しては似通っているとは言いづらいが、『逃げ恥』の人物設定にある「スーパーハイスペックイケメン」は、真一にも当てはまる部分である。さらに、『逃げ恥』を観ていた人にとっては、放送の間に流れていた日産ジュークの特別CMで、ジュークに乗る寝起きの風見が囁いてくるという映像も懐かしいのではないだろうか。

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