BL原作アニメが続々と地上波に進出 注目作『抱かれたい男1位に脅されています。』への期待

 濡れ場シーンでは直接的な表現は避けられていたが、カメラアングルの工夫や、台詞などを用い、シーンを連想させるような表現が多く見られた。なるべくカットせず、原作を忠実に表現しようとする制作側の方針がうかがえ、原作ファンの期待を裏切らない作品になっている。

 BL漫画のほとんどは、1冊で完結するものが多いため、10巻以上続いている作品は少ない。原作のストックや人気はもちろん、濡れ場シーンを省いても成立するストーリーの豊かさが、BL作品がアニメ化に近づける条件のひとつかもしれない。『純情ロマンチカ』と『世界一初恋』のアニメ作品をきっかけに、商業BLに興味を持った人も多く、この2作品はBLの入門書とも言えるのではないだろうか。初心者でも受け入れやすい王道ストーリーがアニメ化の成功を導いたと考えられる。

 商業BLコミックだけでなく、BLゲームブランド「ニトロプラス キラル」から出ているBLアダルトゲーム作品『咎狗の血』が2010年、『DRAMAtical Murder』が2014年に地上波でアニメ化されている。どちらもアニメ化の際は、大胆にも一切のBL描写を取り除くという新たな試みを行っている。

 『咎狗の血』は、バトルアクション要素があり、少年漫画を好む女性に支持されていると考えられる。『純情ロマンチカ』や『世界一初恋』など少女漫画的側面の強い作品と比較すると、ファン層が大きく異なっている。

 原作のゲームでは、多数のルートとENDがあり、膨大な量のストーリーを楽しむことができる。BL描写を省いても成り立つストーリーの豊かさはゲーム原作ならではの強みとも考えられるが、実際には作画、脚本崩壊が浮き彫りになっており、ゲームシナリオを12話構成でアニメ化するのは、無理があったと考えられる。

 アニメ作品はかなり不評だったが、当時BLのドラマCDに多数出演していた声優陣がCVを固めており、豪華なキャスティングになっている。その中でも、声優・緑川光はBLアニメ作品として、2005年に初めて地上波で放送された『好きなものは好きだからしょうがない!!』の主演を務めている。こういったBL作品になじみのある声優陣から、原作ファンはBL描写を期待していたところもあったのではないだろうか。

 少女漫画と少年漫画的側面を持つ作品を比較すると、同じBLというジャンルの中でもそれぞれファン層は分かれ、多様化してきていることが分かる。『咎狗の血』のアニメ化は失敗に終わったが、原作であるゲームの移植、ラジオや小説、コミックなど幅広く展開し、人気を博している。コミックは、18禁要素を取り除き一般向けになっているが、世界観は原作に忠実であり、原作ファンの間でも評価は高いと見受けられる。

 また、OAD(コミックに付属するDVD)でのアニメ化が決定している『ヤリチン☆ビッチ部』は、声優陣によるキャラクターソングのシリーズ化が決定しており、10月から3か月連続リリースされる。そして、詳細は未定だがアニメ化も決定している『テンカウント』は、コラボカフェの開催やアプリゲーム化を展開。作品の露出とともに、メディアミックス展開が盛んになっている。以前から、ドラマCD化やキャラクターソングなどの展開はされていたが、以上の作品のように大々的に取り上げられるようになったのは、最近のことのように感じた。

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