朝ドラだからこそ成立したラブストーリー 『半分、青い。』鈴愛と律のキスシーンを読み解く

『半分、青い。』は最強の“ラブストーリー”

 『半分、青い。』は、朝ドラであるからキスシーンはない可能性もありえた。朝ドラの直後に放送される『あさイチ』で、司会の博多華丸・大吉の2人も「しそうでしないのが朝ドラと韓流ドラマ」「わたくしもそう思ってましたけどね」とコメントをしていたくらいだ。

 こうした、キスシーンはなくても成立することや、ヒロインの人生をじっくり半年間をかけて描くという朝ドラの性質が、実はラブストーリーを描くことでも、うまく作用したのではないだろうか。

 その半年という間、鈴愛と律は、それが恋なのかわからない状態があり、お互いに恋人ができたときには、それが恋ではないと思いながらも、何か複雑なものを感じ、また律がプロポーズをしたにも関わらず、タイミングが合わないということもあった。その間、数年を離れ離れで過ごす時間もあった。

 もしも『半分、青い。』が幼なじみとの純愛ものと最初から知っていたら、ここまで興味がわかなかったかもしれないが、そうではなかったことも功を奏した。鈴愛は、マアくん(中村倫也)と涼ちゃん(間宮祥太朗)という男性との恋愛模様も見せた。マアくんの誰のことも好きなのかと勘違いさせるゆるふわな恋愛強者的な雰囲気に若さからころっと転び、人生に疲れたときに、運命っぽい出会いをした涼ちゃんと勢いで入籍してしまった鈴愛は、言ってみれば、とても普通に恋愛を重ねている人と言えるかもしれない。

 しかし、そんなその場の勢いに任せてこなかったからこそ、律との関係性は切っても切れるものではなかった。しかも2人は、今やお互いの持ち味を活かしたままに、同じ夢に向かって進もうとしている同士や相棒でもあるから、若さや性的な動機からくっつく以上の関係性の濃密さがあるし、だからこその、一度はキスしても「大丈夫、まだ引き返せる」「まだ大事には至ってないな」というセリフなのである。こうして整理してみると、最終回で2人がどうなろうと、最強のラブストーリーであると思えてくるのだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一、上村海成/佐藤健、原田知世、谷原章介/矢本悠馬、奈緒/清野菜名、志尊淳
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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