『高嶺の花』セクシーでドSな演技で新境地! 千葉雄大が踏み出した新たな一歩
今クールで放映されたドラマの中でも、とりわけその破天荒さで話題をさらった『高嶺の花』(日本テレビ系、水曜22時~)がいよいよ最終回を迎える。華道の家元の娘として生まれた才色兼備のお嬢様が下町の自転車屋の主と恋に落ちる、いわゆる“格差恋愛”がストーリーの主軸ではあるものの、お家騒動あり、兄弟・母娘間のドロドロの愛憎劇ありと、周りの人間関係もややこしいことこの上なかった本作。“視聴率女王”石原さとみがその美貌をあますところなく晒した演技やロックミュージシャン・峯田和伸の純朴な青年役など、俳優たちの演技でも見どころが多かったように思う。中でも大きく印象を変えたキャストと言えば千葉雄大だろう。
本作で千葉が演じたのは、華道界において勢力を拡大しつつある新興流派『宇都宮龍彗会』を率いる宇都宮龍一。イケメンたちが音楽にのせて花を生ける派手なパフォーマンスを展開するなどして生徒を集めている野心家だ。しかし、その実は華道界に君臨する神宮流家元の婚外子。異母兄で神宮流の正当な後継者でもある兵馬(大貫勇輔)を激しく憎み、さまざまな裏工作を仕掛ける。月島家にはもも(石原さとみ)、なな(芳根京子)どちらかと結婚することで家そのものを乗っ取ろうと近づいたかに見えたが、裏では家元と通じ、夫人のルリ子(戸田菜穂)を誘惑したりウブなななを翻弄するなどして暗躍。上半身裸のサービスショットを毎度のように披露したり、Sっ気全開でななやルリ子に迫る演技に「千葉雄大、エロすぎる」とSNS上は大いに盛り上がった。
モデル出身、戦隊ヒーロー(『天装戦隊ゴセイジャー』)を経て俳優業へ転身と、昨今の若手俳優がたどる王道とも言えるキャリアを積んできた千葉。時には少女コミックさながらの王子様、またある時は校内きっての秀才とさまざまな役柄を演じてきたが、その小動物的で愛らしいルックスは幅広い世代に愛されてきた。特にここ最近の快進撃はすさまじく、2017年は4クールのすべてのドラマに出演、公開された出演映画は6本にものぼる。まさに引く手あまたの活躍ぶりだ。そんな中で挑んだ『高嶺の花』の龍一役は、いわばこれまでにない“汚れ役”。公式サイトには、「自分の中で挑戦ではありますが、役柄同様、虎視眈々と高みを目指したいと思います」とコメントを寄せているが、物語のキーマンを印象付けるアクの強い演技といい、相当気合を入れて臨んだことがうかがえる。憎しみ、怒り、騙し、裏切り。負の感情が支配する龍一を演じきったことは、千葉がこれまで培ってきた役者としてのベクトルとは真逆の方向を広げてくれたはずだ。劇中ではたびたび「清さと濁り」「たゆたう光と影」と言った言葉で人間の持つ相反する特性について語られてきたが、龍一はまさにそんな“ゆらぎ”を体現したキャラクターだったのではないかと思う。最終話では、龍一が不幸な生い立ちのせいで、荒んでしまった心をどう取り戻していくのかに注目したい。家元にもなれず、すべてを失った彼が、ななに許されたことで光を見い出せたなら、それはある意味ハッピーエンドなのかもしれない。