ジェイソン・ステイサムの無敵っぷりを上回るスリルと恐怖 『MEG ザ・モンスター』4DX版を体験

『MEG』4DX版のスリルと恐怖

 サメ映画は、今やB級映画の一大人気ジャンルとなった感があるが、その決定版ともいえる大作映画が満を持して登場する。それが『MEG ザ・モンスター』だ。

 ジェイソン・ステイサムとサメという組み合わせという時点が面白い。そりゃあ、どっちが強いのか見てみたくもなる。かつてエイリアンとプレデターが激突したときのような、あるいはジェッキー・チェンとジェット・リーが共演したような、そんな興奮を覚える組み合わせではないか。

 しかし、今までになかったこの組み合わせに懸念がないわけではない。いかにデカいサメが出てこようともステイサムには強いイメージがつきまといすぎている。実際、普段の彼の出演作を観ると、ステイサムが画面に登場するだけで勝ち確定みたいな雰囲気も漂うし、ものすごい安心感を感じてしまう。

 そういう意味でステイサムとパニック映画の相性は決して良いとは言えない。この映画はその相性の悪さを乗り越えられるのか、それが筆者の鑑賞前の頭にあったポイントだった。

 結論から言うと、4DXという映画表現の新たな武器を手にしたおかげでその命題はこれ以上ないほどに果たされた。彼の醸し出す無敵の雰囲気を上回るスリルを作り出してくれた。

ふんだんな「揺れと水責め」で抜群の臨場感を創出

 大陸から200キロ離れた海洋から深い場所に潜水した探査船が未知の海溝を発見する。人類が未だ踏み入ったことのない深い海で、一行は未知の生物と接触し、消息を絶つ。探査チームは潜水レスキューのプロ、ジョナス(ジェイソン・ステイサム)に救助を依頼するが、救助に向かった先で彼が見たものは太古の昔に存在したとされる超巨大サメ「MEG」だった。太古の怪物を蘇らせてしまった人間は、このモンスターから無事に逃げ切ることができるか。解き放たれたMEGはビーチも恐怖の渦に陥れる。

 冒頭、潜水艦の救助作業をするジョナス。一刻を争う状況で、何か巨大なものが潜水艦にぶつかってくる。ステイサムが命からがら逃げ出す珍しいシーンから始まるのだが、強烈な座席の揺れによってその恐怖に説得力を与えていた。

 

筆者は本作を最初に2Dで、次いで4DXで鑑賞したのだが、最初に2Dで観た時にはあのステイサムが逃げるなんて信じられなかったが、4DXで観たら逃げねばならない状況であったことの説得力が格段に跳ね上がった。右から左から、さらに後ろからガンガンと身体を突き上げてきて、一刻の猶予もない状況であることを、頭ではなく身体に教え込むような演出で、確かにここまで逼迫した状況ならステイサムでも逃げるしかない。

 

冒頭から全身をスリルで鷲掴みにされたが、息つく間もなくどんどん水中のアクションが展開する。本作は世界で一番深い海とされている場所にさらに下があるという設定だが、人類未踏の地で人類の出会ったことのない巨大サメと遭遇するインパクトは、やはり4DXでなければ表現できなかっただろう。



 最もスリリングなシーンは、巨大サメ「MEG」が、リー・ビンビン演じるスーインが乗り込んだシャークケージに噛みつき、つながった船ごと振り回すシーンだろう。右に左にブンブン揺さぶられ、海のシーンだけあって水の演出もふんだんに使われ、クルーと一緒に船で揺さぶられている気分になってくる。



 本作は舞台の大部分が海なので、必然的に「水責め」が多い。そこまで大量の水を吹き出すわけではないが、船のへりにいる時に波しぶきがかかるあの感触を映画館にいながらに感じさせてくれる。憂いなく映画を楽しむためには、濡れて困るような服は来ていかない方が無難だろう。

 

地味ながら個人的に好きな本作の4D演出は、ジョナスがタイのリゾート地にいるシーンで、やさしげなそよ風が横から吹き付ける演出だ。映画館は基本的に暗闇の密室なので、時に圧迫感を感じることもあるが、ちょっとしたそよ風を体に浴びるだけで、まるで南国のリゾート地にいるような、とても開放的な気分に浸ることができて映画の世界もより広く感じることができる。4DXは爆発やカーチェイスシーンなどの派手なシーンで効果を発揮するイメージが強いが、こうした地味なシーンでも手を抜かずに細かい演出が施されている。ぜひ本作の4DXを体験する時には、アクションシーン以外の細かい演出にも注目してみてほしい。

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