「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
過去と現在を同時並行して描く際に、最も重要な要素の一つとして時代考証の正確さが挙げられる。「時代が変化した」という事実をどこまで緻密に表現できるかどうかで、本作の出来が大きく左右されるということに、恐らく大根監督も自覚的だったと思われる。90年代の音楽を全編に渡って担当したのは、引退も表明していたあの小室哲哉だ。篠原涼子が安室奈美恵の楽曲をカラオケで歌うシーンに感動を隠せない鑑賞者も多いのではないだろうか。ヒステリック・グラマーのショッパーやポスカ、レコード屋「Cisco」の袋、ルーズソックスなど当時のカルチャーを再現する小道具への配慮も徹底している。
ディレクションとして、雑誌『egg』創刊にも携わった米原康正や、当時コギャルだった人たちに取材し、口調・仕草・ファッションの研究、女優陣への授業も行ったというエピソードからは、90年代の日本独自の空気感の表現への追求の姿勢が伺える。「今の子はみんな静か」といった台詞は、昔を懐かしむ言葉であると同時に、現代への時代批評としても機能する。
本作では、前述のように時代の変化が意識的に描かれる。だが、そうすることで逆説的に人が団結し、前へ進む姿勢は不変であるということが示される。22年の時を経て、かつて青春時代を謳歌したサニーの面々も、「大人」としてそれぞれの現実の問題に直面することとなるが、彼女たちは再度の団結を通して、新たな未来への可能性を感じていく。本作は決して懐古主義的なノスタルジーのみを描いたものではなく、現在と地続きの作品だ。
スクリーンの彼女たちと同じように当時青春を謳歌した人も、当時を知らない若い世代も、彼女たちに背中を押されて、新たな季節へと歩みを進められるのではないだろうか。
■公開情報
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
全国公開中
監督・脚本:大根仁
出演:篠原涼子、広瀬すず、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美、池田エライザ、山本舞香、野田美桜、田辺桃子、富田望生、三浦春馬、リリー・フランキー、板谷由夏
原作:『Sunny』CJ E&M CORPORATION
音楽:小室哲哉
配給:東宝
(c)2018「SUNNY」製作委員会
公式サイト:http://sunny-movie.jp/