目標のための犠牲は必要なのか? 土屋太鳳主演『チア☆ダン』第7話には深く考えさせられる

『チアダン』目標のための犠牲は必要?

 結果的に麻子は、福井県大会への重要なステップとなる「北信越チャレンジカップ」で優勝するため(JETSが出場しない大会ならば尚更負けるわけにはいかないのだ)、その後輩とのLINEのやり取りを断ち、これまで通りの部活と学業の両立を選ぶ。それは、部活と家の手伝いとの両立を諦めた妙子(大友花恋)を“切る”という選択を仲間たちがするのを目の当たりにしたからに他ならない。

 だがその直後のシーンで、妙子の件を相談しにいったわかばに太郎が語る言葉は、麻子の境遇にも通じるものがあった。「何かを手に入れるためには、必ず何かを捨てなあかんのかな?」。部活と学業を完璧にこなすために、それ以外のことをゼロにしなくてはいけないのか、誰もが一度は経験したことのあるこのジレンマは、限られた時間の中で1秒1秒も無駄にできず、磨き続けなくてはならない彼女たちや、目標を追う人々にとっては永遠のテーマであろう。

 もちろんこのテーマに答えは存在し得ない。何かを捨てなければ何かに没頭できない人もいれば、そうでない人もいる。そして、その言葉を受けたわかばは、妙子が部活を諦めないことと、Rocketsが優勝することを両方実現するための策として、妙子の家の手伝いをメンバーが交代で行い、練習時間を分配していくという方法を見出すのだ。互いに助け合いながら、誰も見捨てることなく成長していく、Rocketsらしいチア・スピリッツといえよう。

 大会に後輩を誘った麻子は、そこで彼から全米を目指す大会や受験が終わるまで待っていることを告げられる。「何かを手に入れるために何かを捨てる」、このテーマに直面し、悩む前に忘れてはいけないのは、部活や恋愛はもちろんのこと、青春時代のすべてのことが“1人ではできない”ということなのではないだろうか。クライマックスに向けた3年生編の輝かしい第1歩を踏んだこの第7話は、なかなか深く考えさせられるエピソードであった。

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■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『チア☆ダン』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜放送
出演:土屋太鳳、石井杏奈、佐久間由衣、山本舞香、朝比奈彩、大友花恋、箭内夢菜、志田彩良、オダギリジョー、佐生雪、溝口恵、福地桃子、堀田真由、伊原六花、足立佳奈、石崎なつみ、坂ノ上茜、守屋ことり、八木莉可子、阿川佐和子、木下ほうか、高橋和也、紺野まひる、松本若菜、本多力、森矢カンナ、木原勝利、広瀬すず、新木優子
原作:映画『チア☆ダン』製作委員会
脚本:後藤法子、徳尾浩司
プロデューサー:韓哲
協力プロデューサー:高山暢比古
演出:福田亮介、金子文紀
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/cheerdan_tbs/

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