民放ドラマは今、若手俳優を育てている? 松本穂香ら7月クールドラマ主演女優陣から考察
だから、なんでもかんでも朝ドラ出身女優と言ってしまう風潮には頭を抱えているのだが、逆に言うと、それだけ他のドラマが見られていないということなのだろう。逆に言うと民放のドラマからは、若手俳優を育てる環境が減っている。特に学園ドラマは減少していて、出演俳優はどんどん高年齢化している。
そのため、若手女優の出演できる場所というと、女子高生向けの少女漫画原作の恋愛映画か朝ドラかということなのだろう。だが、そこも出演俳優がルーティン化しており、一時期は、土屋太鳳と広瀬すずと小松菜奈と菅田将暉と山崎賢人の順列組み合わせでキャスティングが回っている状態だった。この流れはさすがに沈静化しつつあるが、もう少し冒険したキャスティングが見たい。
玉石混交で面白いのが、AKB48を筆頭とするアイドルドラマだ。2010年の『マジすか学園』(テレビ東京系)では、前田敦子、大島優子を筆頭に松井玲奈や篠田麻里子といったアイドルが予想を超えた魅力を見せた。出演女優の多くはAKBグループに所属するアイドルで、ほとんどが演技未経験。そのため玉石混交なのだが、まれにすごい女優が出てくることがある。現在放送中の『マジムリ学園』(日本テレビ系)も終わる頃には後に名女優となる片鱗を見せるアイドルもいるかもしれない。今のところNGT48の荻野由佳がいい。
そんな中、若手女優の発掘という役割を今一番果たしているのはYouTubeやInstagram(以下、インスタ)で配信されているWEBドラマだろう。インスタでは先日まで『デートまで』という森川葵と佐藤玲の出演する縦長のドラマを配信。YouTubeでは現在公開中の映画『少女邂逅』のスピンオフドラマ『放課後ソーダ日和』が森田想、田中芽衣、蒼波純の出演で配信されている。『この世界の片隅に』で主演を務める松本穂香もYouTubeのWEBドラマ『#アスアブ鈴木』でぶっ飛んだ役を演じている。
インスタのストーリー機能で限定配信された『それでも告白するみどりちゃん』は現在、YouTubeでも配信されており、主演のりりかには注目が集まっている。WEBドラマは、1話の時間が短くストーリー自体はささいなもので出演女優のPVのようだ。しかし、だからこそ女優さえ魅力的であれば成立する。テレビドラマが巨大化しすぎて身動きが取れなくなっている中、次代を担う若手女優は小規模だからこそ自由度の高いWEBドラマから現れるはずだ。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊、『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰ほか
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、新井美羽、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘祐太郎、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
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