山下智久のポジションは“憧れ”から“仲間”へ 『劇場版コード・ブルー』絆によって手に入れた“強さ”

『コード・ブルー』山下智久の変化

 さらに3rd season最終話で藍沢は「9年前、ここに来た理由は、難しい症例が集まるからだった。あの頃の俺は、自分のために医者をやっていた。今は、誰かのために医者でありたいと思う。俺はそれを、お前たちから教わった」と、自身の成長は仲間のおかげだとまっすぐに語る。孤独であることから生まれる“強さ”を失った藍沢だったが、仲間との絆によって、それ以上の“強さ”を手に入れたのだ。

 一方で、先の白石の言葉は「藍沢先生がいなくたって、私たちはちゃんとやれる。違う……あなたがいない分、強くなろうとする」と続く。9年の間に、救命チームでの藍沢のポジションもまた、“憧れ”から“仲間”へと大きく変わっていた。自分にも周囲にも厳しい藍沢だが、その裏には、いつだって優しさが溢れている。現場での頼れる言動はもちろん、電車で泣いている白石をさりげなくかばったり(2nd season)、冴島(比嘉愛未)の流産に落ち込む藤川(浅利陽介)に「人は幸せになるために結婚するんじゃない。辛い毎日を2人で乗り越えるために結婚するんだ」と寄り添ったり(3rd season)、根底にある温かさは人を惹きつける。そして、それを知る仲間たちが、彼を慕わないはずもない。

 『劇場版コード・ブルー』では、前シーズンまでに描かれてきたエピソードが大きく意味を成しており、藍沢のバックボーンもまた物語の重要なカギを握る。そして、その過去を乗り越えた彼が放つ言葉には重みがあり、仲間たちが表情で魅せる“藍沢への思い”には、セリフ以上の感動が押し寄せる。加えて、フライトドクター出身である自分に誇りを持つ藍沢の姿は、『コード・ブルー』や共演者を誇りに思う役者・山下智久と重なり、より一層、観る者の心を熱くする。

 救命チームの絆を包み隠さず映すことで、自然と“過去”を回顧する本作は、キャストのみならず、ファンそれぞれが作り上げる10年の集大成といえそう。未曾有の事故を壮大なスケールで描写する一方、1stシーズンから一貫して変わらぬ藍沢の“強さと優しさ”を細やかに描く『劇場版コード・ブルー』。思い思いの感情を胸に、スクリーンに刻まれる藍沢らしい“芯のある温かさ”に、改めて触れてみてほしい。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■公開情報
『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』
全国東宝系にて公開中
出演:山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、成田凌、新木優子、馬場ふみか、新田真剣佑、かたせ梨乃、山谷花純、丸山智己、杉本哲太、安藤政信、椎名桔平
監督:西浦正記
脚本:安達奈緒子
音楽:佐藤直紀
プロデュース:増本淳
主題歌:Mr.Children「HANABI」(TOY'S FACTORY)
配給:東宝
(c)2018「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」製作委員会
公式サイト:http://www.codeblue-movie.com/

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