ブラッド・バード監督が見せつけた“格の違い” 『インクレディブル・ファミリー』のすごさを解説

『インクレディブル・ファミリー』すごさ解説

新しい時代へのメッセージ

 本作は、家族とヒーロー両方のドラマを描きながら、「本当のヒーローとは何か」ということを考える作品である。自分以外の人間を、力を尽くして助ける存在がヒーローの条件なのだとしたら、最大限の力を発揮して家族を守る両親という存在は、ヒーローになり得る役柄なのである。そしてインクレディブル・ファミリーは、そんな献身的な愛情を受け取った子どもたちもまた、親を助けるために奮闘することになる。これは、様々な立場の観客に向けた、「誰もがヒーローになれる」というメッセージだ。

 ブラッド・バード監督は、描くべき物語ができるまで、『Mr.インクレディブル』の続編は作らないと公言してきた。今回、彼自身が生み出した物語は、旧来より男女によって分けられてきた役割から脱却する、新しい家族のあり方と、それを維持していく努力の尊さである。そしてそれは家族や、あらゆるコミュニティーを構成する人々、一人ひとりの内なるヒーローに委ねられているのだ。

 その力強いメッセージを、本作の物語や魅力ある演出は効果的に支えている。本作を観ることで、アニメーション表現とは、ここまでの完成度へと到達することができるのかという感銘を受けてしまう。ピクサー・アニメーション・スタジオの能力を最大限に引き出す、ほぼ完璧といえる指揮と、アニメーション表現への深い理解、脚本・演出に文句のつけようがない才能を発揮したブラッド・バード監督、やはりおそるべしである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『インクレディブル・ファミリー』
全国公開中
監督:ブラッド・バード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
公式サイト:disney.jp/incredible

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