テレ東ドラマBizはTBS日曜劇場を超えるか? 『ラストチャンス』に見るビジネスブランディング

ドラマBizは日曜劇場を超えるか?

 ただ、テレ東の場合は後発なだけに、差別化を図るビジネスの現場を描くということを、最初からきっちりとうたっている。しかも、テレ東の22時台はほかの日も、ビジネスの現場を追ったドキュメンタリー、バラエティを連日放送しているため、週を通してのブランディングにも成功している。

 しかも、それらの番組を作る上で得たノウハウや知識も、オリジナルであれば盛り込めていたりするのではないかと思えるし、原作ものをドラマ化する際にも、細部のリアリティが増しているということもあるのではないか。

 今回の『ラストチャンス 再生請負人』は、主人公が銀行から飲食業界に転身し、再建をはかるという内容だが、その中で、フランチャイズの権利をさまざまな企業に売りつけ、資金繰りを行い、そのせいで窮地に陥っているというエピソードも描かれる。こうした描写を見ていると、確かに続々と増えるフランチャイズチェーンを実際に見ている我々にとっても、身近な問題に思えてくるのだ。

 本作の原作のもとの題名は『人生、七味とうがらし』というものだったという。七味とうがらしというのは、ある占い師が主人公に言ったことがもとになっている。人生においての七味とうがらしとは、うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみを意味する。主人公は、「これから七味とうがらしをたっぷりきかせた、味に深みのある人生になる」と占い師に言われるのである。

 この七味のエピソードもドラマの中では要所要所に出てくるのだが、本作は、そうした人情話や教訓を中心におかず、ビジネスの現場を描く方向に舵をきっている。しかし、ビジネスの問題をきっちり描いているからこそ、このようなちょっとしたエピソードが、まさに七味のように効いてくるのだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
ドラマ Biz『ラストチャンス 再生請負人』
テレビ東京系にて、毎週月曜22:00〜
出演:仲村トオル、椎名桔平、和田正人、大谷亮平、勝村政信、町田啓太、石井正則、本田博太郎、ミッキー・カーチス、嶋田久作、竜雷太(特別出演)、水野美紀、長谷川京子、池田成志、荒井敦史、中川知香、佐伯大地、渡邉蒼、岩松了
原作:江上剛 『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫刊)
脚本:前川洋一
監督:本橋圭太
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:川村庄子(テレビ東京)、松野千鶴子(アズバーズ)、木川康利(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
製作著作:テレビ東京
(c)テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/lastchance/

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