志尊淳になぜオファーが殺到するのか? 『女子的生活』から『半分、青い。』まで、その演技を考察
俳優・志尊淳が絶好調だ。NHKの朝ドラ『半分、青い。』で、ヒロインの楡野鈴愛(永野芽郁)とともに漫画家を目指す“ボクテ”を演じた志尊は、本作に限らず、2018年のさまざまな活躍が認められ、ORICON NEWSが発表した『2018上半期ブレイク俳優(男優)ランキング』で見事1位にも輝いた。
2018年1月期に放送されたNHKのドラマ『女子的生活』で主演を務めたことも多くの人が注目した要因のひとつではないだろうか。このドラマの中で志尊は、トランスジェンダーのヒロイン・みきを演じた。心は女性、恋する対象も女性という設定で、気持ちを理解して演じるには、難しい役であったと思われるが、トランスジェンダー指導を担当する西原さつき氏の指導を受け演じきっていた。
町田啓太が演じるみきの同級生で、彼女の部屋に転がり込んできた後藤との対比も描かれたことで、みきが、世の中の出来事を後藤のように単純に見られない複雑さの中で生きているという実感が感じられたし、そんな正反対の2人が、いわゆるバディのような関係になっていくという展開も、今のドラマファンの気分に合致していたのではないか。個人的には、安易でどこかで見たことのある恋愛関係で終わるものよりも、複雑だけれど確かな気持ちが描かれているもののほうがぐっとくる。
志尊はこの作品での演技が評価され、コンフィデンスアワード・ドラマ賞の主演男優賞を受賞したほか、作品がギャラクシー賞の月間賞にも輝いた。
世間に「ブレイクした」と認識される俳優は年に何人も登場するが、それがそのときの瞬間最大風速的な人気という意味での評価に終わらず、そのフレッシュな魅力が、同時に演技の実績に結び付くことはそうそうない。それが、志尊がほかの俳優と違うところではないだろうか。
ただ、そこには本人の努力も無関係ではないだろう。『半分、青い。』では、ゲイのボクテ役を演じた志尊だが、ボクテの心が男性なのか女性なのか、その結果、なぜ女性らしいと思われる言葉を使うのかなどについては、『女子的生活』で勉強した結果、制作側よりも緻密に考えていたようで、制作側にもそんな疑問をぶつけ、ひとつひとつ自分で納得したうえで、表には表れない部分での演技を固めたそうである。