石原さとみ、井浦新、窪田正孝が異なる役柄に! 『アンナチュラル』出演陣登場の夏ドラマに注目

夏ドラマ、『アンナチュラル』出演陣に注目

 不自然死の背景にメスを入れることで、その隠された真実に光を当てる解剖医の模様を描いた『アンナチュラル』(TBS系)。主演の石原さとみをはじめ、井浦新、市川実日子、窪田正孝、松重豊ら演じる個性豊かな登場人物からなるチームは魅力的だった。さて、今クールも夏ドラマがスタートしたわけだが、『アンナチュラル』の出演者から、石原、井浦、窪田の3名が各局のドラマに出演する。いずれも『アンナチュラル』での役柄から離れたキャラクターだけに、以降3人がどのような演技をみせるのかが気になるところだ。そこで、今回この3名の役者をピックアップし、各々が出演するドラマの概説とともに、その役どころを見ていきたい。

 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。これは、学生時代に誰もが習った、日本国憲法第25条の第1項である。“健康”は比較的分かりやすい。ただ、“文化的”とは具体的にどういうことなのか、子供のときには今ひとつ分からなかった方もおられよう。実際、大人が読んでもなかなか説明するのが難しいものである。

『健康で文化的な最低限度の生活』より (c)関西テレビ

 7月17日からスタートする『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系、以下『ケンカツ』)は、この“文化的”に“最低限度の生活を営む”ことの本質を示してくれる作品になるのだろうか。吉岡里帆演じる新米ケースワーカー・義経えみるが、生活保護受給者と接していくことで成長していく模様が描かれる本作。井浦新は本作で、えみるの上司役として出演する。テーマがある種の深刻な事柄に切り込んでいるだけに、様々な問いを投げかけ、議論を呼び起こすドラマになりそうだ。

 本作には、主演の吉岡のほか川栄李奈、山田裕貴、小園凌央らが吉岡の同期役を務め、田中圭、遠藤憲一らが脇を固める。『アンナチュラル』ではぶっきらぼうな口調でありながら、内面には熱い想いと優しさを抱くという複雑な解剖医・中堂系を演じた井浦。やや強引にも思える彼の振る舞いの背後には、中堂が納得できないままに恋人を失ったという壮絶な経験があった。ファンが指摘するように、中堂の失った恋人・夕希子とは、まるで主題歌「Lemon」の歌詞の中の“切り分けた果実の片方”であるかのように、かけがえのない存在だった(というよりむしろ、あの歌自体が中堂と夕希子について書かれているように見えなくもない)。

 そして、今回の『ケンカツ』ではそんな中堂のダークなキャラクターから一転、井浦は物腰柔らかなケースワーカー・半田明伸として出演する。新米のえみるが慣れないケースワーカーの仕事に苦闘する中、頼れる指導係としてえみるを支えていく役柄だ(間違っても“クソ”とか、“バカ”という台詞は聞こえてこないだろう)。生活保護に関するニュースはしばしば新聞やテレビで取り上げられ、時には大きな論争を巻き起こす。しかし、その影で役所の人間がどのように考え、社会を見つめ、行動を起こしているのかということはなかなか目の当たりにする機会は少ない。だからこそ、えみるら演じる東区役所の職員たちの模様を描いた本作は私たちにまた新しい視座を提供してくれることであろう。井浦新の“温かい先輩の背中”に注目したい。

『高嶺の花』より (c)日本テレビ

 先日第1話が放送された『高嶺の花』(日本テレビ系)には、石原さとみが華道家・月島ももとして出演している。石原は日本テレビの水曜22時枠では『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』以来のカムバックという形になる。ただ、『校閲ガール』では、恋に、仕事に熱く燃えるヒロインを演じたわけであるが、それ以後の『アンナチュラル』では基本的には恋愛要素を極力含ませなかったうえ、今回の『高嶺の花』でも元婚約者(三浦貴大)との過去がきっかけで負った深い傷に悩み続けるという役柄。『アンナチュラル』以降、フジテレビの『リッチマン、プアウーマン』『失恋ショコラティエ』『5→9〜私に恋したお坊さん〜』に代表される、“月9ヒロイン的石原さとみ”とはまた違う一面を、連続ドラマで徐々に見せ始めているといえよう。

 当サイトで行った野木亜紀子のインタビューにあるように、そもそも『アンナチュラル』は、無理に恋愛要素を絡めさせる必要がある作品ではなかった。だからこそ、物語の序盤で結婚していたかもしれない男性との別れがあってからは、あからさまなミコトの恋模様のなさが、作品にある種の重厚感を与えたように思える。こうして初めて、全10話の中で、解剖医という仕事とミコトのひたむきな死体への向き合いにフォーカスが定まり、視聴者は不自然死とその背後のエピソードの展開に集中することができた上、解剖医としての石原さとみが際立った。

 今回の『高嶺の花』も、大まかなジャンルとしては恋愛ドラマになるのかもしれないが、今までの石原主演の恋愛モノとは趣が異なる。華道家という職業や、自分は「なりたい顔1位」じゃないかとまくしたてるような台詞なんかも斬新ではあるが、元婚約者との別れで生じた、名状しがたいモヤモヤ感を自分の中に“傷”として隠し持つ彼女の姿は、新しい一面に映る。物語の序盤の朝食シーンでは不味そうに食パンをかじるのに対し、終盤の直人(峯田和伸)との朝食シーンでの対比は見事だった。冗談めいたことを言いながら、直人と腹を抱えて笑い転げながら箸を持つももからは、今後直人との出会いで“傷”が癒やされていくことを予感させる一幕であった。

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