永瀬正敏、日本映画界の大きな希望に 『パンク侍、斬られて候』『Vision』に見る映画俳優の姿

永瀬正敏、日本映画界の大きな希望に 『パンク侍、斬られて候』『Vision』に見る映画俳優の姿

 一方、封切られたばかりの『パンク侍、斬られて候』では、あまりに現実離れしたエッジの効いたキャラクターを好演。当然のことながら、ぱっと見では分からない、特殊メイクを施した永瀬の“サル姿”は衝撃的だ。本作の監督である石井作品への参加は、監督の石井聰亙名義の時代に、弁慶と遮那王の戦いを描いたSF時代劇『五条霊戦記//GOJOE』(2000)や、浅野忠信とともに奇天烈な電撃バトルを演じた『ELECTRIC DRAGON 80000V』(2001)、そして浅野、伊勢谷友介らスターともにタイトル通りの“激走”をスタイリッシュに魅せた『DEAD END RUN』(2003)に出演。監督が石井岳龍名義となってからは『蜜のあわれ』(2016)で、金魚売りの男をミステリアスかつひょうひょうと演じていて、今回で5作目の参加となっている。

 今作で特異な人物たちが次々と登場してくる中で永瀬が演じるのは、“人間の言葉を巧みに操るサル”という、もっとも特異なキャラクター。でありながら、そこに自然とおさまっている様には、思わず「さすが」と感嘆の声を禁じ得ない。河瀬作品の“職人”的な役どころとは違うものの、作品に合わせ、作り手の生み出すその世界観にフィットする様はまさに職人芸的なものを感じる。

 いまさら永瀬のこの演技の幅の大きさについて言及することは野暮だというものだが、タイプの異なる作り手からのオファーが絶えず、その内容が面白ければ応えるというスタンスは、少なからず今の日本の映画界の持つ豊かさに貢献していると言えるはずだ。映画ファンたちだけでなく、若い作り手たちにとっても大きな希望となっているのではないだろうか。実際彼はこれまでにも、そうして映画界を歩んできた。これからも彼が希望で有り続けるのは間違いないが、いま言えることはただひとつ。彼に会いたければ、映画館に行くよりほかに手はない。永瀬正敏とはそんな俳優である。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『パンク侍、斬られて候』
全国公開中
監督:石井岳龍
脚本:宮藤官九郎
出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、村上淳、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司、永瀬正敏
原作:町田康『パンク侍、斬られて候』(角川文庫刊)
配給:東映
(c)エイベックス通信放送
公式サイト:http://www.punksamurai.jp/

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