永野芽郁と佐藤健が見た夢の顛末 『半分、青い。』が描く、残酷な“時間”の生々しさ

『半分、青い。』が描く残酷な時間の生々しさ

 そしてそれはこのドラマが、ただ「昔はよかった」と音楽や風景で楽しく懐かしい近現代を振り返るだけのノスタルジーで終わらないことを示している。1999年、たった19年前の世界は、20代後半女性にとって現代よりもあからさまに窮屈で、親切心、親心というベールを被った“呪い”の言葉に溢れている。「若さ」を武器にマウンティングしてくる女性に対し「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」と言い放ってくれるドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016/TBS系)の石田ゆり子は出てこない。

 石田ゆり子は登場しないが、斎藤工は登場する。鈴愛は第82話でボクテとユーコの言葉を反復し「女の価値」と呟く。それに重ねるように示されるのは、斎藤工演じる映画監督・元住吉祥平のいかにもな前衛芸術映画『追憶のかたつむり』の一場面であり、そこに書かれた「制圧、弾圧」などの言葉の羅列はもしかしたら、鈴愛の内に芽生えた言葉にならない違和感に密やかに寄り添い、彼女の代わりにその薄っぺらい「女の価値」に対して異を唱えているのかもしれない。暗闇の中に自ら望んで身を置き、眩しい太陽の光に眉をしかめる謎の男は、失意の鈴愛にどんな影響を与えるのだろう。

 予告において、やけに舞い上がった鈴愛と雨の中踊っていた間宮祥太朗演じる涼次は、今度こそ本当にヒロインの相手役になり得るのか。鈴愛はこれからどうやって人生を歩み、私たちが生きる現代へと近づいていくのか。全く予想がつかないこの朝ドラ、まだまだこれからが楽しみである。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳/間宮祥太朗、斎藤工、嶋田久作、キムラ緑子、麻生祐未
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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