テレ朝ドラマ、新しさと古さのバランスが絶妙に 独自の作品を生み出す手法
また、テレ朝ドラマとして面白かったのは『警視庁・捜査一課課長』。本作はいわゆる1話完結の刑事モノで、今回でシーズン3となる人気シリーズだ。正直、言うと始まる前は全く期待していなかったのだが、新しく登場する女刑事役を安達祐実が演じると知って俄然興味が湧いた。
本作の主人公は大岩純一という約400人の部下を指揮する捜査一課長なのだが、演じているのは内藤剛志。安達祐実とは『家なき子』(日本テレビ系)で親子の役を演じていて、その時は娘を苦しめる最低の父親だったのだが、今回は彼女を見守る上司役というのが、胸が熱くなる。
安達祐実が演じる女刑事・谷中萌奈佳は幼少期から柔道選手として注目されていてオリンピックで金メダルをとることを期待されていたが、本番で力を出せずに敗退し、その後は、警視庁の彼女だけが所属する広報課で、柔道選手時代の知名度を活かしたPR活動をおこなっていたアイドル存在だった。
そんな彼女が女刑事として捜査に参加することで新たな人生を歩んでいくのがシーズン3の見どころなのだが、谷中の人生が、人気子役としてブレイクした後、紆余曲折の人生を歩んできた安達の姿と重なるため、本編とは別のドラマが裏コードとして走っているかのような面白さが存在する。
こういう出演俳優の文脈を利用して物語に厚みを持たせる手法はテレビドラマではある種、定番だが、まるで『家なき子』の「後日談」や「ifの世界」を見ているかのようだった。シリーズものの刑事ドラマで、こういうおかしなことを時々やるからテレ朝のドラマは油断できない。
また、今期はトレンディドラマ以降、連ドラが描いてきた“仕事と恋愛”の見せ方を更新しようとする意欲作が出揃った。前述した『おっさんずラブ』や連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)はその筆頭だが、90年代前半に『モーニング』(講談社)で連載された新井英樹の漫画をドラマ化した『宮本から君へ』(テレビ東京系)もその一つだろう。本作の主人公は、文具メーカーの営業として働く宮本浩(池松壮亮)。物語は前半と後半で別れていて、前半で宮本が駅で見かけた甲田美沙子(華村あすか)との痛々しい恋愛を描き、第5話以降は、新規案件をめぐるライバル会社との入札対決となっていく。本筋は後半なのだが、宮本が仕事に打ち込むきっかけとなった甲田との青臭い恋愛は、痛々しくて生々しい描写となっており、今作が女優デビューとなる華村あすかを鮮烈に印象付けた。
宮藤官九郎・脚本の『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)のような例外を除くと、20代の男性を主人公にして仕事や恋愛を描くような作品は減少していたので、『宮本から君へ』の登場は素直に嬉しかった。『おっさんずラブ』のようなポップでクレバーな作品も好きだが、『宮本から君へ』のような泥臭い作品も、もっと出てきてほしいと思う。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■リリース情報
『おっさんずラブ』
10月5日(金)Blu-ray&DVD発売、レンタル全4巻同時リリース
<Blu-ray>
価格:21,600円+税
<仕様>2018年/日本/カラー/本編+特典映像&音声特典(収録分数未定)/16:9LB/1層/音声:リニアPCM2chステレオ/字幕:なし/全7話/5枚組(本編Disc4枚+特典Disc1枚)
<DVD>
価格:17,100円+税
【仕様】2018年/日本/カラー/本編+特典映像&音声特典(収録分数未定)/16:9LB/片面1層/音声:ドルビーデジタル2.0chステレオ/字幕:なし/全7話/5枚組(本編Disc4枚+特典Disc1枚)
※仕様は変更となる場合がございます。
【特典映像】
★おっさんずラブ2016
★記者会見
★PRスポット集ほか(予定)
【音声特典】
出演者による本編副音声を収録!
#2…田中圭×林遣都
#6…田中圭×内田理央×瑠東東一郎×Yuki Saito
※収録内容は変更となる場合がございます。
出演:田中圭、林遣都、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、眞島秀和、大塚寧々、吉田鋼太郎
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
主題歌:スキマスイッチ『Revival』(ユニバーサル ミュージック)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
発売元:株式会社テレビ朝日
販売元:TCエンタテインメント
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