清野菜名が永野芽郁に贈った最後のエール 『半分、青い。』2人の友情を振り返る

『半分、青い。』鈴愛と裕子の友情を振り返る

 それから3年後の1995年。ユーコの『5分待って』は連載打ち切りに。そこからユーコは、見る見るうちにすさんでいく。かつて、モスコミュールを鈴愛と物珍しそうに飲み、渋谷や青山は自分たちが行くには厳しいと話していたユーコは、現実を忘れるかのように合コンで飲み明かし、青山にオフィスとマンションを持つインテリアコーディネーターと結婚する。「結婚もできないし、子供も産めない」「漫画を描く機械だ」と自分の中で“苦”になってしまった漫画への積もり積もった本心をぶちまけるユーコに、鈴愛は「世界はわたしのものだってきっと思える。わたしが、わたしたちが秋風先生のような漫画を描いた日には、きっとそう思える。ユーコ、頑張ろ」と希望に満ちた言葉を差し伸べる。

 ユーコに「漫画を描く機械だ」と言わせてしまうほどに、漫画家の世界は孤独で、果てのない世界。だからこそ、いつか人を感動させられたらと、漫画家たちは物語に夢を抱き続ける。ユーコが神様と崇め、何度も口ずさんでいたシーナ&ザ・ロケッツの曲は「You May Dream」。漫画に未練はないと秋風に伝え、自身の部屋で『5分待って』のコミックスを握りしめ泣くユーコの涙には、一度は夢見た漫画家としての幸せを諦めること、長年自分の居場所としてあったオフィス・ティンカベールを離れることへの寂しさが見える。

 だからこそ、ユーコが鈴愛に送った言葉、「君、頑張れよ。漫画。私の分までとは言わない。私の人生は私のもの。鈴愛の人生は鈴愛のもの。みんな、自分の分しか頑張れない。でも、鈴愛は私と熱量が違う。私は鈴愛になれなかった。ずっと思ってた。鈴愛はきっと成功する。みんなの憧れるものをきっと作る」は、それぞれの幸せの在り方を肯定しながら、夢を託すでもなく、鈴愛の夢を戦友として応援しているという、最高のエールのように感じた。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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