『ブラックペアン』最終回直前! 二宮和也演じる渡海の人物像を改めて検証する
TBS系日曜劇場『ブラックペアン』も、いよいよ最終回を残すのみ。前回20分拡大版で臨んだ第9話は、番組最高を記録した第8話と同じく16%台をマーク。終盤に向けて世間の注目度も増してきている印象だ。その理由は、なんといってもドラマ開始初期より匂わされている“ブラックペアン”の謎がようやく明らかにされようとしている点だろう。二宮和也扮する主人公・渡海征司郎が隠し持ってきた人体にペアンの影が見えるレントゲン写真。明らかな手術ミスは本当に父・渡海一郎の犯したことなのか。なぜ渡海は内野聖陽演じる佐伯清剛に執拗な復讐心を燃やしているのか。ふたりの知られざる過去と確執、そしてタイトルの意味するところが、ついに白日のもとに晒される。
本作において放送前より話題となっていたのが二宮がこれまでにない“ダークヒーロー”を演じるという点だった。本人も公式サイトのインタビューで「渡海はとても嫌な人です(笑)。主人公なら時折見せる優しさもまったくない」とコメントしていたが、なまじ「嵐」としてバラエティ等で見せる顔や、好青年を数多く演じてきた過去作を知る人には、なかなかに衝撃だったのではないだろうか。常に気だるげで、誰に対しても不遜な態度。しかし一度手術室に入れば、その天才的な腕前を見せ、多くの同僚たちの自信を奪ってきた“オペ室の悪魔”。ともすれば、マイナスイメージがつきかねないところだが、フタを開けてみれば「ニノの演じる渡海かっこよすぎる!」「演技の振れ幅がすごい」と絶賛の声が相次ぎ、改めて役者としてのポテンシャルの高さを見せ付ける結果となった。正直普通のドラマの主人公と比べると、画面に映っている時間もセリフも少なかったようにも思えるが、登場シーンの圧倒的な存在感はそれゆえ逆に引き立ったのかもしれない。いずれにしろ、新境地と呼んでしかるべき、素晴らしい演技だったと思う。
しかし、渡海が本当に嫌な人物かと言えば、視聴者の中には当初と印象が変わってきたと感じる人も多いのではないだろうか。はじめこそ、冷酷無比、他人に心を許さない一匹狼な言動が目立ったが、回を追うごとに医師としての誠実な姿勢が垣間見えるようになった。オペの最中、何らかのミスにより患者の命が危険になると、颯爽と現れ悪態をつきながらも完璧に救ってみせる。第1話から変わらないパターンだが、何度も繰り返されることで、実は彼が人命救助を誰よりも追求していることが伝わってきた。周囲を取り巻くのが、いかにインパクトファクターを得て日本外科学会のトップに立つかばかりを考える佐伯や、患者を助けるよりも論文執筆に執念を燃やす高階(小泉孝太郎)ら、“命”よりも“権威”に重きを置く人物ばかりだったことも重要なポイントだろう。これによって、渡海が突き詰めてきた“人を救う”という医者の本分がより浮き彫りになったとも言える。ラストは、渡海がまぎれもなく真の医師であること知らしめるような、そして「医者とは何か」「命とは何か」を観る者に考えさせるような展開が待ち受けているのではないだろうか。