J・ギレンホールを通して苦しみを疑似体験 『ボストン ストロング』が示す“ヒーロー”のあり方

J・ギレンホールを通して苦しみを疑似体験 『ボストン ストロング』が示す“ヒーロー”のあり方

 よくある映画ならば、いくつかの出来事を経験することによって、良きタイミングで主人公が立ち直るものだが、本作のジェフはなかなかその兆しが見えない。一体いつ前向きになってくれるのかとジリジリさせられるが、その一方で、たしかに現実はそうだと思わせる。人間、そんなにイージーに変われるものではないのだ。立ち直るタイミングを逃し続ける主人公の姿は、ヒーローでもない、高潔な人格者でもない、普通の人間そのものだ。だからこそこの映画は、多くの観客が自分の話として共感できる作品になっている。

 ただジェフには、彼にしかできない能力を手に入れたことも確かなのだ。それは、事件によって苦しんで悩み抜いたからこそ、取り返しのつかない悲劇に遭った人間の心が分かるという力だ。そして、彼の言葉はそんな相手の心の奥にまで届くのだ。

 ジェフは、劇中の登場人物が語る、「人を助けることで自分が救われる」という考えを学ぶ。他人や身近な人たちに手を差し伸べることは、自分自身の存在する理由や価値に気づかせてくれる。両足を失った被害者を英雄として持ち上げ、国や街の象徴として扱うというのは、確かに無神経で身勝手な期待である。自分のことだけを考えていたジェフならば、ただそうとしか思えなかっただろう。しかし彼は、その役割を引き受け、自分の能力を他人のために使うことで、生きる力を与えられていく。TV番組やイベントに出演したりするからヒーローなのではない。他人を助ける行為をする瞬間、ジェフはそこでヒーローになれるのである。そしてその事実は、観客であるわれわれ一人ひとりも、そうなれるということを示してくれているのだ。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』
TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
出演:ジェイク・ギレンホール、タチアナ・マスラニー、ミランダ・リチャードソン、クランシー・ブラウン
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ジョン・ポローノ
原作:ジェフ・ボーマン、ブレット・ウィッター著
配給:ポニーキャニオン
提供:ポニーキャニオン/カルチュア・パブリッシャーズ
映倫区分:PG-12 
(c)2017 Stronger Film Holdings, LLC. All Rights Reserved. Motion Picture Artwork (c)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:bostonstrong.jp

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