田中圭×林遣都×吉田鋼太郎が見事なハマり役! 『おっさんずラブ』王道ラブストーリーの魅力
そしてなにより、田中圭、吉田鋼太郎、林遣都の見事なハマリ役ぶりとその絶妙すぎるキャラクターの面白さである。
吉田鋼太郎演じる乙女心の強い上司・黒澤武蔵は衝撃的だ。シェイクスピア演劇仕込みの声の張り方で「なんてこった!」を連呼する。自分をかばって病院に運ばれた春田の元に駆けつけた時の犬みたいな「ハッハッハッハッ」という息遣いと泣きそうな表情、ドキドキしながら手作りのカラアゲを食べさせようとする時の「よっしょしょしょ」、就寝中、妻・大塚寧々に無理やり顔認証をさせられている時の顔。「可愛い」と言いながらどうにも大爆笑してしまわずにはいられないのが、ズルイぐらいキュートな吉田の凄さだろう。手を振り払われた時の切なげな表情、林遣都演じる牧が自分の知らない春田を知っていることに動揺して「はるたん、そんなんじゃねえよ」とムキになる時の心なしか淋しそうな表情は、思わず胸に迫るものさえあった。
一方、黒澤のライバル、林遣都演じる牧凌太である。彼の恋はその見た目のクールさとは裏腹に熱く、切ない。第1話の病院に運ばれた春田が無傷だと知った時の表情は春田じゃなくても「こんな顔するんだ」と新鮮だった。職場の先輩と後輩として、同居人として春田に惹かれていく姿は、田中圭がそれだけ魅力的に演じているということもあり、説得力がある。だからこそ、自分を抑えきれなくなったシャワー中のキスシーンからの第2話の展開は、男同士だろうが男女間だろうが関係なく、多くの視聴者が自身の苦い片想いの記憶を反芻したことだろう。
第2話の終盤、春田は、牧の告白を受け止めきれず、動揺して思わず否定してしまう。幼なじみのちず(内田理央)に咎められ、走って牧を探し、「俺にはお前が必要なんだよ」と叫ぶ春田。それはいわゆる恋愛映画のそれなのであるが、あくまで春田は今までと変わらない友達としての居心地のよい関係性を求めているだけであって、公園で「天体観測している」と言う牧に「見えねーし、なんにも」と答えてしまうように、春田と牧は同じ時間と空間を共有しながらも、捉え方が全く違うのだ。爪先立ちで春田の額にキスをして「普通には戻れないです」と牧は去っていく。
屋上での牧の告白を受けて、春田はツッコミの「おいっ」を2度繰り返す。それは、シャワー中のキスを「男子高のノリ」だと思い込みたかった、居心地のよい「友達」のままでいたかった春田の切実な心情を物語っていた。ある意味、彼らは互いに片想いなのである。
本日放送の第3話は、春田と牧も気になるが、やはりコメディエンヌぶりを静かに発揮している大塚寧々を巻き込んだ春田と武蔵の展開が必見だろう。予告を見た限りでは、今のところ潔癖症で真面目な上司といった雰囲気の眞島秀和がなにかしら動きだしそうで楽しみである。
■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。
■放送情報
土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15〜放送
出演:田中圭、林遣都、吉田鋼太郎、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、眞島秀和、大塚寧々ほか
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ) 、松野千鶴子(アズバーズ)
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove/