4月クールは“警視庁もの”3作が強い! 海外ドラマを思わせる、テレビ朝日のコラボ戦略
4月クールの連続ドラマは、テレビ朝日制作の捜査サスペンスが好調だ。井ノ原快彦主演の『特捜9』、内藤剛志主演の『警視庁・捜査一課長』、そして波瑠主演の『未解決の女 警視庁文書捜査官』。なんと霞が関の警視庁本庁を舞台にした刑事ものが3作も並ぶ。いずれもリアルタイムの視聴率は好調でトップ3を占める勢い。強い、強すぎる。他局は正直、お手上げといった状況だろう。
『特捜9』は、故・渡瀬恒彦主演で続けてきた『警視庁捜査一課9係』をシーズン12終了後にタイトル変更して新シリーズとしたもの。『警視庁・捜査一課長』は2時間ドラマから始まって連続ドラマに昇格し、シーズン3に突入。どちらも東京・大泉の東映撮影所を撮影の拠点とする東映制作のシリーズである。<東映×テレビ朝日>のシリーズには、他にごぞんじ『相棒』(右京は警視庁特命係)や『科捜研の女』(ここにも内藤剛志が!)もある。だが、新顔の『未解決の女』は東映制作ではないのに、『警視庁・捜査一課長』とコラボしたので驚いた。
『未解決の女』の第1話、過去の殺人事件を解決した矢代(波瑠)たちの前に“一課長”こと、大岩(内藤)が現れる。矢代の所属する特命捜査対策室第6係は、警視庁捜査一課内の部署なので、この物語世界でもトップは『警視庁・捜査一課長』の大岩という設定になるらしい。大岩が矢代の肩を叩き「矢代、これからもホシを挙げてくれよ。期待しているぞ」という、とってつけたようなセリフを言う場面で、両ドラマを盛り上げるための突発企画というのは明らかだったが、制作会社の違いという壁を超えたのは驚いた。逆に『警視庁・捜査一課長』にも『未解決の女』の矢代が登場。この分では、『特捜9』の特別捜査班の上司も大岩ということになりかねない。イノッチ演じる主人公の直樹の前にいつ大岩が現われても驚かないよう心の準備をしておこう。
ここで思い出すのは、アメリカの捜査ドラマの“フランチャイズ”だ。ひとつの世界観の下で、基本設定やキャラクターを共有しながらスピンオフなどを作っていく手法をそう呼び、例えば15年間にわたりヒットした『CSI : 科学捜査班』シリーズは、本家ラスベガスに始まり、マイアミやニューヨークなど次々にスピンオフを作っていった。それぞれの地域警察のCSI主任(主人公)が出張して捜査し、人気キャストが共演するなど、クロスオーバーエピソードでも盛り上げた。
他にも『LAW & ORDER』シリーズや『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』など、フランチャイズしていったシリーズは多い。いずれも放送局がCBS、NBCなどの地上波ネットワークであることも特徴だ。そして、今、NBCが拠点のひとつであるシカゴを舞台にフランチャイズを大々的に展開しているのが「シカゴ・シリーズ」。シカゴ51消防署の消防士たちが命がけの火事現場で活躍する『シカゴ・ファイア』が始まったのが2012年。そこから、シカゴ市警察の特捜班を舞台にした『シカゴ P.D.』、総合病院を舞台にした『シカゴ・メッド』と次々に展開。主要キャラクターだけでも50人を超す勢いで、このフランチャイズ作品を全て観ていれば、消防士と警察官、刑事に医師、そして検事がそろった劇中のシカゴが、まるで現実のシカゴのように見えてくるかもしれない。劇中では、連続放火殺人事件で『ファイア』の消防士と『P.D.』の刑事たち、さらに『メッド』の医師が協力しあうという総出動のクロスオーバーエピソードも。もはやここが並行世界のシカゴであるような錯覚すら抱いてしまう。