岩田剛典の無垢な笑顔は視聴者をワクワクさせる 『崖っぷちホテル!』で謎の男を好演

岩田剛典、『崖っぷちホテル!』謎の男を好演

 4月15日より放送が始まった新ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。舞台は、かつての風格を失った老舗ホテル。戸田恵梨香演じる若き総支配人・桜井佐那は、総支配人であった父が亡くなった後、跡を継いだ兄が残した大量の借金を抱えながら、クセもの揃いの従業員とホテルの存続に悪戦苦闘している。そこへ突然やってくる、みすぼらしい格好をした謎の男を演じるのが岩田剛典である。

 岩田演じる謎の男・宇海は、作品冒頭から得体が知れず、視聴者をハラハラさせる。笑顔を絶やさない彼は、従業員たちの対応に難があっても穏やかに対応する。その姿からは柔らかな雰囲気も感じられるが、風貌や要望の無理難題さから若干の気味悪さも感じさせるから面白い。現実にいたら少々不気味に感じられる気もするが、岩田の屈託のない笑顔と純朴そうな目によって不快感はない。むしろ「これからどうなるのだろう」とドラマの展開に期待が高まるのだ。これは俳優・岩田剛典の魅力とも言えよう。

 宇海はくたびれたロングコート、ボサボサな髪、だらしのない靴下を履いてホテルに現れる。渡辺いっけい演じる副支配人・時貞正雄は「格式高いホテルにふさわしくない」という理由で顔をしかめ、戸田演じる佐那に追い出すよう命じる。ソファで眠っている宇海の横で、佐那は思わず従業員に対する愚痴や得体の知れない宇海についてボソッと呟いてしまうが、そのとき彼は目を覚ましていた。宇海は佐那の愚痴を咎めるではなく、だからと言って聞いていなかったフリをするわけでもなく、その後も佐那にさまざまな要求をする。

 注目すべきは、このシーンからの岩田の演技である。岩田の台詞回しは絶妙で、彼の台詞は佐那に対する嫌味にも聞こえるし、助言にも聞こえる。無理難題を押し付けてくるただの客にも、何か裏のある人物にも見えるため、視聴者は宇海が敵なのか味方なのかわからない雰囲気についついのまれてしまう。少年のような笑顔と、クギを刺すかのような鋭い台詞が絶妙に絡み、宇海の得体の知れなさを一層際立たせる。

 岩田が今まで演じてきたキャラクターを振り返ると、今作のような掴みどころのないキャラクターは過去にない。初回放送前のインタビューで、岩田は宇海の役作りについて「イメージはディズニーの妖精さん」と答えている(番組公式サイトより)。台詞や台詞回しにだけ注目すると、あの格好からは想像がつかないほど、的を射た発言が多い宇海。しかしディズニーの妖精さんをイメージした岩田の演技により、ただ真っ当な意見を発する優秀な人間像から、ホテルに思い入れのある純粋な人間像へと柔らかく変貌する。視聴者は宇海が何者であるかますます分からなくなる。そして、物語の行く末に興味をそそられるのではないだろうか。

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