日本映画界の才能が結集! 民放のテレビドラマでは成しえない『イノセント・デイズ』の魅力
現在、WOWOWプライムにて放送中の『連続ドラマW イノセント・デイズ』。早見和真の同名小説を原作に、放火殺人の罪で死刑判決が下された幼なじみの女性の無実を信じ、主人公が奔走するうちに少しずつ真実に近づいていく様子を描いた作品だ。3月25日に放送された前回の第2話では、主人公・慎一(妻夫木聡)が、幼なじみの女死刑囚・幸乃(竹内結子)が中学時代に起こしたという強盗傷害事件の真相を探るべく、当時の同級生である理子(長谷川京子)のもとを訪れ、その真相が明らかとなった。
時代は1994年へ。当時13歳の幸乃を演じるのは、大ヒットを飛ばす『ちはやふる』シリーズ待望の完結編『ちはやふる -結び-』に登場を果たし、主演の広瀬すずや松岡茉優らを相手取り、彼女たちに続く汗がよく似合うスポーティーで勝ち気な“かるた少女”を好演し、その存在感を示している清原果耶だ。現在16歳の彼女はこれまでに、ドラマでは『放送90年 大河ファンタジー「精霊の守り人」』(2016・NHK)で綾瀬はるか演じる主人公の少女期を、映画では『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』で小松菜奈演じるヒロインの中学時代や、『ユリゴコロ』で吉高由里子演じる殺人者の少女期をそれぞれ演じてきた。いずれの作品でも、特異なキャラクターたちの“かつて”の姿に、そのミステリアスな佇まいでリアリティを与えてきたのだ。本作で言えば、か弱いながらも芯があり、どこか陰のある、まさに“イノセントな”彼女の存在こそが死刑囚の過去にリアリティーを与え、この第2話の空気を見事に作り出す、まさに適所なキャスティングであった。
そして本作の演出を務め、彼女の魅力をさらに引き出した石川慶監督の手腕には、この第2話でも唸るばかり。冷たく暗いルックに、不安を煽るようにジワジワと動くカメラ。冒頭の燃え上がる家屋のファーストカットの禍々しさには、不謹慎ながら、胸躍らさずにはいられない。筆者個人としては、監督の劇場デビュー作『愚行録』(2017)の登場に衝撃を受け、その後製作されたショートフィルム『点』(2017)の1週間限定上映にもいそいそと駆けつけたものだった。次なる作品の誕生を待ち焦がれていたところに現れた本作に、「なぜ映画ではなくドラマなのか」、とたしかに思ったのが正直なところではある。
しかし、民放のテレビドラマでは成しえない、そして映画とはまた違った時間をかけ、丹念に綴られる物語を、6週間、約6時間にわたって堪能していくことができるというのは喜ばしいことである。『愚行録』でも主演を務めた妻夫木が早見の手がける原作に惚れ込み、石川の才能と結び合わせこの企画を実現させたのだというが、妻夫木と同様に“陰”の演技も円熟味が増しつつある竹内や、作品の規模やジャンル問わずバイプレーヤーとして間違いのない働きを見せる新井浩文、そして朝ドラから月9、さらには映画でと次々に才能を開花させていく芳根京子といった面々が集い、世間一般的に抱かれがちな彼らのイメージとは違う路線での作品参加への姿勢も、本作の魅力のひとつだろう。