門脇麦、“言葉にしづらい”魅力を読む 劇中で見せる“覚醒”の瞬間

門脇麦、なぜ陰キャラなのに魅力的?

「門脇さんは、(相手の)受けの芝居の目線が綺麗で、良い表情をたくさんしている」(引用:デイリースポーツonline|『岸善幸監督『二重生活』、門脇麦の魅力』)。門脇麦の単独初主演映画『二重生活』を監督した岸善幸は、彼女の演技をそう絶賛していた。岸監督のこの発言を読むまでは、「陰キャラで受身的な役柄が多い印象だけど、そこにとどまらない繊細な魅力を感じる。でも言葉にしづらい」というのが正直なところだった。しかし、改めて門脇の出演作を振り返ってみて気づいたのは、「受身的だけど、徐々に自分の中の秘めたる“何か”に気づき、最終的には能動的に生きようとしていく」という“覚醒”の傾向だった。

『二重生活』(c)2015『二重生活』フィルムバートナーズ

 2013年公開、女子高の放送部が舞台の青春ガールズムービー『スクールガール・コンプレックス~放送部篇~』では、突然放送部に入部してきた三塚チユキ役として出演。序盤こそ、ふてぶてしさや現実世界に絶望していそうな雰囲気が目立った。しかし、入部前から憧れていた部長との交流を経て、学園祭の朗読劇の練習に励んだり、自分の複雑なバックグラウンドを共有したりしていく。序盤から中盤にかけての変化で、髪をロングからトレードマークのショートに切り、目の輝きが増していくのも印象的だった。

 出世作の『愛の渦』(2014)は、「セックスしたい」という目的のためだけに集まり、乱交パーティを繰り広げていくコメディ。そこで女子大生役として出演した。一見地味で性にうとそうな奥手女子だったが、ニート役の池松壮亮と2人きりになり、目を合わせるやいなや、自分からがっつき、以降吹っ切れたように自分から体を動かしていく姿が印象的だった。この演技に関して、池松は門脇を「儚く脆く強く美しく、誰よりも覚悟を持った女優さんでした。本物でした」(引用:映画.com|『「愛の渦」三浦大輔監督×池松壮亮×門脇麦が成し得た共犯関係』)と絶賛。また監督の三浦大輔も、「変な話ですが、門脇さんがどんどんかわいくなっていくんですよ。最初のマンションでの面接のシーン、かわいくないでしょ? 現場で見ていても明らかにかわいくなっていきましたね」(同記事)と、「女優としての覚醒」を愛おしそうに語っていた。2014年公開の本作と、『シャンティデイズ 365日、幸せな呼吸』(2014)、『闇金ウシジマくん Part2』(2014)での演技も注目され、当年のキネマ旬報新人女優賞を受賞した。

 2016年公開の映画初単独主演作『二重生活』では、哲学専攻の大学院生・白石珠役を演じた。珠は、「自分がなぜ生きているのかよくわからない」などのモヤモヤを抱えたまま指導教官に修論の相談をすることで、「哲学的尾行」を持ちかけられて、それを実践。隣人の男を尾行する中で、彼が不倫している現場を見かけ、さらに修羅場にも出くわす。その流れでついに男から尾行がバレるが、尾行していたことで、過去の恋の経験で充実していた感覚を思い出していく。また、「受身の演技」では、「常にモヤモヤを抱えてボーっとしている」人物造形のためか、人と話すときに目をあまり合わせようとせず、何か聞かれてもワンテンポ遅れて返事するような点も見事だった。

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