亀梨和也主演ドラマ『FINAL CUT』はただの復讐劇ではない 第1話で描かれた“情報への疑念”

ただの復讐劇ではない『FINAL CUT』

 「こういうのはね、どうにだってできるんですよ」。

 カンテレが制作している火曜よる9時のドラマ枠と言えば、意欲的な作品が多い印象だ。昨年だけでも、『嘘の戦争』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『僕たちがやりました』『明日の約束』という4タイトルが放送され、どれも過激で挑戦的な内容の物語を展開。そんな中、同枠で放送される新ドラマ『FINAL CUT』(カンテレ・フジテレビ系)の第1話が、1月9日に放送された。この作品もまた、例によってキレッキレに攻めた内容だ。むしろ、今までで一番攻めの姿勢を見せているのではないだろうか。

 というのも、昨年、フジテレビ系列で放送された番組を含め、「これは“フェイクニュース”や“捏造報道”ではないか?」という騒動がいくつか巻き起こったことが記憶に新しいからだ。そんな中で、メディア・パニッシュメント(犯人視報道・報道断罪)”を題材にした本作を放送するということに、意義を感じざるを得ない。

 物語は、中村慶介(亀梨和也)の「違う、そんな人じゃない」というモノローグから始まる。12年前、百々瀬塁(藤木直人)が司会を務めるワイドショー番組『ザ・プレミアワイド』にて、慶介の母・恭子(裕木奈江)が、まるで殺人犯であるかのように放送された。その番組がきっかけで、世間からの誹謗中傷にさらされた恭子は、次第に追い詰められ、ついには自ら命を絶ってしまう。慶介は、母が犯人と疑われた12年前の事件の真犯人を探し出すとともに、母を追い詰めた者たちへの復讐に動き始める。

 第1話「母のため僕はテレビに復讐する」では、情報への疑念が描かれていた。私たちが信じて疑わない真実(情報)が、実は故意的に作られた嘘であるかもしれない、目の前にある情報をただ鵜呑みにしてはいけないという注意を喚起しているようであった。映像を切り貼りすることで、いくらでも嘘は作れる。そして、名前や素性もまたいくらでも偽ることが可能だ。

 慶介は、母が生前に呟いた「私じゃない! あの夜見かけた、あの男……」という言葉から、当時母親が園長として働いていた保育園「ルミナスキッズ」の上階にあった「小河原法律事務所」の長男・祥太に目をつけていた。そこで、彼とは兄弟関係にあたり、事件の鍵を握る小河原姉妹、姉の雪子(栗山千明)と妹の若葉(橋本環奈)に接触を図る。

 12年前の事件当夜に「走って戻ってくる園長を見た」と目撃証言をした雪子には、絵の勉強をしている青年・吉澤ユウと名乗り、12年前の事件の日に「兄(祥太)は終日家にいた」とアリバイを証言した若葉には、普通のサラリーマン・高橋マモルとして交際を続けていた。まさか2人とも同じ男に恋をしているなんて思ってもないだろう。そして彼が本当は“中村慶介”であることにも気づかない。提示された“情報”を信じて疑わないのである。

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