>  >  > 社会現象となった『君の名は。』を振り返る

『君の名は。』大ヒットの理由は予告編にあった? 新海誠×川村元気の運命的なコラボを振り返る

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 「興行収入250億3000万円」「観客動員約1900万人」という成績は、とてもピンとくる数字ではない。それでも、“大ヒット”という言葉を身をもって体験することがほとんどなくなった最近の映画館で、半年以上もロードショーが続けられ、多くの人が話題にあげていた。実に久しぶりに、“大ヒット”という言葉をまざまざと体感させられた作品、それが新海誠監督の『君の名は。』だったのだ。

 すでに公開から1年半が経って、改めてなぜこの映画がこれほどの大ヒットを記録したのか考えたところで、その確たる答えというものは見つけようがない。

 「面白い」からヒットするわけでも、「時代」に即していたからヒットするということも一概に言えない中で、まして新海誠という作家が前々から国民的人気を博していたわけでもない。そんなあらゆる謎があるからこそ、“社会現象”と呼ぶに相応しいのかもしれない。

 そうは言っても、本作が極めて娯楽性の高い良作であったことは言うまでもない。改めてどういう作品だったのか説明するまでもないが、簡潔に言うと、東京に住む男子高校生と、飛騨高山に暮らす女子高生が不定期的に入れ替わるという物語。ジャンルとしては青春映画ともラブストーリーとも断言できず、若者の日常と非日常を器用に入り混じらせたファンタジックな映画といったところだろう。

 公開前の段階から、それなりに高い評判はあったにしても、絶大なブランド力も派手なマーケティングを行ったわけでもない。にも関わらず、最初の週末から2日間で68万8000人が劇場に詰めかけ、興行収入は9億3000万円を叩き出す驚異のスタートダッシュ力。公開後のロングランは“口コミ”と“作品評価”で片付けられるが、こればかりはそうはいかない。

 同じ時期にヒットした『シン・ゴジラ』を考えれば、ゴジラという強力なブランドに豪華なキャスティング、そして『エヴァンゲリオン』の庵野秀明の新作というキーワードが並び、大ヒットするのも納得できる。それらと比べれば、人気のある神木隆之介の配役と、アニメ映画という加点ポイントはあれど、新海誠にRADWIMPSという組み合わせは、やはりターゲットがかなり絞られていたのである。

 仮説として、夏休み終わりに公開させたことが、序盤に映画館に訪れた人たちが予告編を目にする機会が多かったという、単純な訴求効果に結びつけることができる。しかしながら、2017年に同じ方法でヒットすると思われた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、その3分の1に満たないスタート。訴求力で言えば対等ではありながら、日本人の“二番煎じ(っぽいもの)”を嫌う傾向が顕著に出たと考えられる。

『君の名は。』予告編

 そうなると、やはり予告編の段階で何か大きく突き動かされるものがあったから、という見方が賢明だろう。もちろん、長く新海作品を観てきたファンからしてみれば、待望の大規模公開作。期待が高まって当然のことだ。ではそれ以外の人に対してはどうだろうか。本作の予告を観返してみると、そこには前述したような無ジャンル感の強みが完璧に発揮されていることがわかる。

 新海作品おなじみの情緒的な空とRADWIMPSの曲の躍動感。都会の人からも地方の人から見ても見慣れた景色に、純和風なアイテム。男女両方が主人公であり、そして入れ替わっているというオールドファッションな題材。恋愛映画への発展も期待できそうな作りに、記憶を失うというミステリアスな要素。映画にあるあらゆる二極的な部分を、両方とも乗せてしまうという荒技で、改めて観ても、面白そうな予告編なのだ。

      

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