俳優・玉森裕太の旬がやってきた! 『重要参考人探偵』“余裕”の演技を考察

 Kis-My-Ft2玉森裕太は、いつからこんなに自然な演技をするようになったのか。現在、絶賛放送中のドラマ『重要参考人探偵』(テレビ朝日系)で玉森が演じるのは、なぜか死体の第一発見者になってしまい、まっさきに犯人ではないかと疑われるモデル・弥木圭。ドラマはコメディタッチに1話完結で描かれる。死体を見つけたときのリアクションは、本当に玉森が苦手なものと遭遇してしまったかのようだ。事件に巻き込まれてめんどくさそうにする気だるさも、刑事に追い詰められてなんとか推理をひねり出そうとする目の奥の焦りも、全く演技臭くない。

 漫画原作の実写化ということもあり、設定は現実離れしている部分が多い。登場人物たちもかなり個性的だ。玉森が演じる弥木圭も、火事場の推理力を発揮していく。時間稼ぎのために、モデルウォークをしてみせたり、シェイカーを振りまくってみせたり、ミシンの縫い目でチューリップを作ってみせたり……と、シュールな展開も多い。だが、それでも弥木圭の存在自体は、とてもリアルに感じられるから不思議だ。ドラマの中の人ではあるが、玉森が弥木圭を“演じている“というよりも、玉森と同じ顔をした弥木圭が画面の中で“生きている“という感覚で見ることができるのだ。

 玉森の演技に急激な変化を感じたのは、今年春に放送した金曜ドラマ『リバース』(TBS系)だった。藤原竜也、市原隼人、三浦貴大、小池徹平と、同世代の実力派キャストが集結していたが、玉森は学生時代からの友人グループのひとりで高校教師の浅見としてすっかり溶け込んでいた。いい意味で“ジャニーズアイドル“というオーラを脱いで、一般にいるイケメンという絶妙なバランスを取っていた。セリフのないシーンでも、そこに思考を続ける浅見がいたのだ。そう思えたのは、なぜなのか。

 『重要参考人探偵』がスタートするタイミングで、玉森は雑誌『QLAP!』(10月号)でこんなことを話していた。「(共演者と)心の距離を縮めたほうがいいものが作れることがわかったというか……『リバース』での経験が大きいかも。あのドラマは、ご飯の会がすごく多かったんです。今までにないくらい役者さんとスタッフさんとご飯を食べてお話して。そうすると現場で芝居をする上で質問もしやすくなるし、芝居をみんなで作っているなっていう感じがして、オレはすごく好きでしたね」カメラが回ったから、その役になりきるのではなく、その作品に携わっている間、その役と一緒に過ごすということ。それが、玉森の演技をより自然にしたのではないだろうか。

 ジャニーズはダンスレッスン以外の歌や演技は、基本的に独学で習得する。舞台に立ち、実践的に成長していくのが常だ。玉森も2004年に初舞台を経験し、2009年には舞台初主演。2011年にCDデビューすると、すぐさまテレビドラマ初主演に抜擢された。そして2012年から2016年まで連続して舞台の座長を務めるなど、着実に場数を踏んでいった。だが、今の自然な言い回しを見て振り返ると、いずれも成長過程真っ只中だったのだと実感する。

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