松岡茉優、老若男女問わず人気のワケ 『コウノドリ』下屋加江役の“全力演技”を読む

松岡茉優は“最強”と言っても過言ではない

 『コウノドリ』第四話では、帝王切開既往歴のある妊婦が経膣分娩を行う“TORAC”を希望する妊婦(安めぐみ)を巡って、サクラ(綾野剛)と四宮(星野源)が対立する場面が描かれた。可能な限り妊婦に寄り添おうとするサクラと、病院の現状やリスクを重んじる四宮は、互いの主張がなかなか交差せず対立することも多い。この二人の間に立ちペルソナメンバーのムードメーカー的な存在になっているのが、松岡茉優演じる下屋医師だ。サクラと四宮をはじめコウノドリでは魅力ある人物が多く描かれているが、今回のコラムでは下屋医師の魅力にフォーカスしたいと思う。

 松岡茉優演じる下屋加江は前シーズンでは研修医という立場だった。二年の時を経た今シーズンでは晴れて専門医となり、ペルソナ総合医療センター産科医に配属されたという設定だ。前シーズンに比べだいぶしっかりしたような印象を受けるが、仕事に対する熱量や患者に対して真摯に向き合う姿勢は健在で、時に暴走してしまう一面も。第四話の冒頭、妊婦の高血圧を報告しなかった研修医・赤西五郎(宮沢永魚)が飄々としている姿に腹を立てビンタする姿があったが、下屋のキャラクターを見事に表した描写だった。

 松岡は1995年生まれの22歳。『あまちゃん』『桐島、部活やめるってよ』など話題作に出演、前シーズンのドラマ『ウチの夫は仕事ができない』では主演を務めるなど、順風満帆な女優人生を邁進している。いずれも高い演技力で役柄を物にしてきた印象だ。また女優業だけではなくバラエティ番組でも見かけることがあるが、場の空気を読んだコメントや腰の低い謙虚な姿勢は、思わず好きにならずにはいられない親しみやすさを感じる。十代の頃はもう少し癖のある印象だったが、最近は丸くなったというか、大人びた印象を受ける。高い演技力とバラエティでも活躍出来る器用さを持ち、そして透明感のある美しさも持っている。こういったタイプの女優は稀有な存在だ。

『ウチの夫は仕事ができない』(C)日本テレビより

 彼女の演技の魅力は何と言っても“全力さ”ではないだろうか。松岡の凄いところは『桐島、部活やめるってよ』のイケてる女子も、『やすらぎの里』のバーテンダ―のハッピーちゃんも、『ウチの夫は仕事ができない』のサーヤも、どの役もぴったりとはまっていることだ。これは役柄の特徴を上手く掴むことが出来るという生まれ持った勘の良さもあるだろうが、それ以上に、演技に真剣に向き合っているからこそ成せることだろう。そしてその全力さ、一生懸命さがこちらに伝わってくるような、そんな真面目さがあると思う。

 今回コウノドリで演じている下屋医師も自分自身の仕事に対して圧倒的な熱量で取り組み大きな使命感を持っているタイプの役だ。松岡の演技のスタイルと下屋というキャラクターの相性が良かったのかもしれないが、きっとそれ以上に、松岡が下屋医師というキャラクターをきちんと咀嚼しているからこそ、綾野剛や星野源、吉田羊など多くのベテラン俳優陣の中においてもしっかりとした魅力を放っているのだろう。そのまっすぐさが老若男女問わず多くの人の心を鷲掴みにするのだと思う。そして、潤んだ瞳とまっすぐな黒い髪を持ち無垢で美しいイメージがありながら、良い意味であか抜けないチャーミングさも兼ね備えている。……もはや最強と言っても過言ではない気がしてくる。

『勝手にふるえてろ』(c)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会より

 冒頭のビンタに続き、「真剣にやらないとやめてもらうからね」と強気の姿勢で挑んだり、サクラの提案で前立ち(手術時の第一助手のこと)することになった五郎が一瞬よそ見をした時には頭突きをしたりと、下屋の熱意ある姿に心打たれた視聴者も多いだろう。特に出産を経験した母たち、これから出産を控えている妊婦たちにとっては、とても心強く感じたのではないだろうか。このような熱意ある医師に出会いたいと思わせる松岡の演技は圧巻だと思った。

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