広瀬すず×生田斗真『先生!』が見逃せない理由 冒険的な演出から読み解く

『先生!』男性キャラが魅力的なわけ


 無論、何度も“キラキラ映画”に出演する演者にとって、その境目となる作品はとても重要になってくる。『僕等がいた』から5年の間で、多くの映画に主演を果たした生田だが、同系統の作品は一本もない(『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』は小説原作なので“キラキラ映画”とは違うテイストだと認識している)。満を持して本作で、同じ監督のもとで大人への脱却を果たしたということである。

 ちなみに他の男性キャストも優れていて、主人公の対比的なポジションとして、比嘉愛未演じる美術教師に真正面から想いを伝え続けるが相手にされない竜星涼や、これまたストレートに自分の感情をヒロインに伝える健太郎。いずれも素直に想いを伝えることができない二人の主人公との明確な対比なポジションとして、映画の根幹を担っている。

 男性キャラを引き立たせるという、少女漫画原作映画では禁じ手のようにも思える冒険を、成功に導いたのは岡田麿里の脚本の力に他ならない。実写映画では今年公開された『暗黒女子』に続いての脚本となるが、これまで彼女が手がけてきたアニメ同様、男性キャラを単なる理想像に置かずに、リアルでありつつドラマチックに再現させることが、功を奏しているのではないだろうか。

 時折、男女キャラを問わずやたらと生々しさを連想させるような台詞を書いたり、正攻法な物語にケレン味を加えるあたりは、岡田脚本らしい。そこに、安定した職人技を備えた三木演出でマイルドさを加えることで、キャスト全員の良さを引き立てる。それぞれに決め台詞のような重要な言葉を与え、スピッツのエンディング曲で綺麗にまとめあげる。実に危なげなく、確実な作りをしている作品だ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『先生! 、、、好きになってもいいですか?』
全国上映中
監督:三木孝浩
脚本:岡田麿里
出演:生田斗真、広瀬すず、竜星涼、森川葵、健太郎、中村倫也、比嘉愛未、八木亜希子、森本レオ
原作:河原和音「先生!」(集英社文庫コミック版)
主題歌:スピッツ「歌ウサギ」(ユニバーサルJ)
製作:映画『先生!』製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)河原和音、集英社 (c)2017 映画『先生!』製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/sensei/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる