佐藤健×綾野剛のぶつかり合いが凄すぎる――『亜人』互いに高め合う“攻防の魅力”

佐藤健と綾野剛が『亜人』で高め合う“攻防の魅力”

 本作では、どこまでもストイックな両者とも、スタントなしの激しいアクションを見せている。戦闘BGMが流れれば、綾野はこの音楽に合わせて残虐なアクションを繰り広げ、まるで広大なダンスフロアで踊っているかのような、華麗な身のこなしを披露。手際よく自ら「リセット」し、不敵に微笑む姿には、後の場面で城田優が口にするように「地球がいくつあっても足りない」ほどの怒りが、内に秘めた狂気として読み取れる。綾野の目が、いつも以上に切れ長であるのも印象深い。


 対する佐藤のクールで的確な判断と、そこから生まれる走りと跳躍。右脳明晰かつ計算された行動は、自身が「亜人」であることに葛藤しながらも、動きそのものには迷いがない。綾野と佐藤の肉体と魂を凄まじくぶつけ合う様には、敵同士としてだけでなく、互いに高め合っている印象も受ける。演じる彼ら自身、互いの印象について「シネマトゥデイ」のインタビューで「ものすごくストイックだと思いました。綾野くんは周りが求める以上、そのもっとずっと上を見続けているんです。綾野くんのことをすごく信頼できたし、主演としても楽なんです。でもそこまで信頼することって、簡単そうで難しいことだと思います」(佐藤)、「健は全くブレないので、主役がブレないということは、共演している側からすると本当に楽なんです。(中略)いつも毅然とした態度で撮影現場にいてくれるので、こちらも何をすべきか見つけやすかったです」(綾野)と語っている。

 本作は、続編の存在をほのめかすように締めくくられる。これから物語が進行すれば、もちろん登場人物たちのレベルも上がってくるだろう。ということはつまり、演じる俳優にはさらに高い次元でのアクションが要求されるわけである。佐藤健、綾野剛、両者の進化にさらに期待値が上がっていく。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『亜人』
全国公開中
監督:本広克行
出演:佐藤健、玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈、山田裕貴、浜辺美波、品川祐、吉行和子、綾野剛
原作:桜井画門『亜人』(講談社「good!アフタヌーン」連載)
配給:東宝
(c)2017映画「亜人」製作委員会 (c)桜井画門/講談社
公式サイト:ajin-movie.com

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