“死体のオナラでジェットスキー”はどう生まれた? 『スイス・アーミー・マン』監督インタビュー

“死体のオナラでジェットスキー”はどう生まれた? 『スイス・アーミー・マン』監督インタビュー

クワン「2人で監督をやったからこそ、より大胆になれた」

ーーその死体ジェットスキーのシーンをはじめ、映画の中ではある意味不謹慎とも言えるような様々な描写が登場します。主演のダニエル・ラドクリフとポール・ダノは出演オファーをすんなりと受け入れてくれたんですか?

シャイナート:2人とも脚本を読んでものすごくワクワクしてくれて、やる気に満ち溢れていたぐらいだよ。特にオープニングの死体ジェットスキーのシーンは、スキーに乗る方も、そしてスキーになる方も、自分が役者としてこの役をやらなかったら、一生後悔するとまで思ってくれたみたいなんだ。

クワン:とは言っても、僕たちからしたら彼らと無事契約を交わしたはいいけど、アイデア自体はクレイジーなわけで、実際に撮影に入る前に少し恐くなったのも事実だね。ポールに関しては、脚本を読みながら、彼自身が感じたことをコメントしてくれたんだ。彼自身の視点、そして彼が演じたハンクの視点で見たときに成立するような内容でなければいけなかったから、それは僕たちにとっても非常に大きな助けになったよ。言い換えれば、ポールが感じていた恐怖がプラスに作用してくれて、より良い映画になったということだね。ダニエルに関しては、一瞬ちょっと恐かったと思う瞬間があったと言っていたよ。彼が演じるメニーがゾンビなのかモンスターなのか、どういう方向で演技をしていいか悩んだことがあったらしいんだ。でもすぐにその恐怖はなくなったみたいだったけどね。

シャイナート:2人に共通しているのは、現場でのコラボレーションを愛していること。だから僕たちも彼らがやりやすいように、お互い話し合いながら作品を作っていったんだ。

ーーあの『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフが、カッター、髭剃り、水筒、銃などの様々な便利機能を持った死体のメニー役として、今回ものすごい体を張っていますよね。彼が「これはちょっと……」というように尻込みをするシーンはなかったのでしょうか?

シャイナート:実はそれが真逆で、ダニエルはとにかく何でも自分でやりたいと言ってくれたんだ。メニーが火だるまになるシーンでも、彼はスタントを使わずに自分でやりたがったから、さすがにそれはダメだと僕たちが説得しなければいけないレベルだった。確かにとんでもないシーンもたくさんあるんだけど、ダニエルはすべてのシーンを自分にやらせてくれという感じで、壊れていたんだ(笑)。コラボレーターとしては本当に最高だったよ。ダニエル自らが凍るような海の中にずっと身を沈め続けている姿を見たスタッフたちも、「子役としてあれだけ稼いだダニエル・ラドクリフがあれだけ体を張っているんだから、自分たちも頑張らないと!」という感じで士気が上がっていったから、僕たちにとってもすごく助かったね。

ーーちなみに、あなたたちは2人とも「監督・脚本」としてクレジットされていますが、作業分担はどのように?

シャイナート:僕は脚本を書くのはものすごく早いんだけど、あまり良質なものを生み出すことができない。だから、僕が書いた脚本をクワンに直してもらっているんだ。その修正作業はものすごく遅いスピードなんだけどね(笑)。現場ではクワンがモニターを見ることが多くて、小道具やスタントなどの各部署と次のシーンのための作業を話し合うのが僕という役割分担だね。だからすべてを一緒にやるというわけではなく、割と細かく作業分担をして、お互いの弱点を克服し合っているんだよ。

ーー2人だからこそできている部分も大きいわけですね。

クワン:僕らをひとりずつに分けてしまったら、監督としてはイマイチかもしれない。でも、2人を合わせれば何とかいけるぐらいにはなるんだ。

シャイナート:映画作りは、実は観客が思っている以上にコラボレーションで作られている。そんな中で監督が2人いると、より謙虚でいられることにも繋がるし、他のスタッフたちにとっても、より一緒に作っているんだという一体感が生まれるような気がするんだ。現場に2人の監督がいることによって、ひとりが牽引しているわけではないという空気を作ることできるというのも大きなメリットだね。

クワン:それに、もしひとりで監督をしていたら、この作品がコケてしまった時は自分の監督人生が終わってしまうという恐さがあったと思う(笑)。2人でやっていたからこそ、より大胆になることができたし、リスクをとることができたんだ。

シャイナート:でも基本的にほとんどの作業をやってくれたのは彼だよ。僕はただ彼を説得しただけだからね(笑)。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『スイス・アーミー・マン』
9月22日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン(ダニエルズ)
出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド
提供:ポニーキャニオン/カルチュア・パブリッシャーズ
配給:ポニーキャニオン
2016年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/97分/G指定
(c)2016 Ironworks Productions, LLC.
公式サイト:sam-movie.jp

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