湊かなえ×菊地健雄が語る『望郷』への想い 湊「一筋の光が見えるようなラストを書きたかった」

湊かなえ×菊地健雄『望郷』インタビュー

菊地健雄「“光”をベースにした一つの映画として作り上げたい」 

――そうなんですね。“光と陰”のコントラストもまた映像ではっきりと表現されていましたよね。

菊地:そうですね。湊先生の原作を拝読した時に、光の部分と陰の部分が六編それぞれに描かれているような印象を受けたので、光の変化、暗さと明るさみたいなものは、今回かなり意識して演出に取り入れました。「しまなみ」と言って、瀬戸内の紺碧な海に、島々が浮かんでいる風景というのは、大きなモチーフの一つになっています。映画の形式においても光と陰はすごく重要な要素の一つなので、主人公たちの心情に沿うような最良の形で素晴らしい原作と組み合わせたいなと。小説とはまた違う、“光”をベースにした一つの映画として作り上げたいという思いがありました。

――湊さんも、原作で“光と陰”は意識していましたか?

湊:そうですね。結局島に閉ざされて、どこにも行き場がなくなるのではなく、折り合いをつけていく中で、今まで見えなかった一筋の光が見えるようなラストを書きたいと思ったので、どの話でも意識しました。それが映像になると、最後の山の上から見た景色であったりとか、夢都子とお母さんがわかり合えた場面だとか、お父さんとの誤解が解けたシーンだとかが、目で見て光を感じることができたので、主人公の心象風景と重なっているようで感動しましたね。島自体に光が差したような、そんな印象を受けました。

(取材・文・写真=戸塚安友奈)

菊地健雄、湊かなえ

■公開情報
『望郷』
新宿武蔵野館ほか全国公開中
監督:菊地健雄
脚本:杉原憲明
原作:湊かなえ「夢の国」「光の航路」(「望郷」文春文庫 所収)
出演:貫地谷しほり、大東駿介、木村多江、緒形直人ほか
制作・配給:エイベックス・デジタル
公式サイト:bokyo.jp
(c)2017 avex digital Inc.

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